1963年3月の東京大学卒業式で、卒業生に向けて語られた茅(かや)誠司氏の言葉に「小さな親切を勇気を持ってやっていただきたい。そしてそれが、やがては日本の社会の隅々までを埋めつくすであろう親切というなだれの芽としていただきたい。(以下略)」というものがありました。これに感銘を受けた数名の方が、代表者の茅氏と共に「小さな親切」運動本部を立ち上げたのがその年の今日でした。「親切」とは「思いやりを持ち、相手の身になって、その人のためにつくすこと。またそのような性質。」と辞書に書かれています。さて、その「親切」が体や心に嬉しい影響を与えてくれることをご存じでしょうか?「小さな親切」運動スタートの日の今日は、「親切」が人に与える影響についてご紹介します。

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「親切」行動がもたらす人への影響とは?

今日のあなたは誰かに向けて「親切」な行いをしましたか?それとも、誰かに親切にされましたか?誰かから心地よい親切を受けると嬉しい気持ちがするものですが、実は親切な行いをした人にも、とても嬉しい効果が期待できるそうです。それは大きく分けて5つ。「親切」は「幸せをもたらす」「心臓と血管を強くする」「老化を遅らせる」「人間関係をよくする」「プラスの連鎖を引き起こす」のだとか。
その中のひとつ「親切は幸せをもたらす」について、カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授であるソニア・リュボミアスキーの研究などで、明らかになっています。研究に参加した人々を2つのグループに分け、1グループには1週間に5つの親切を6週間続けて行ってもらい、もう1グループには行わないようにしてもらったところ、親切を行ったグループだけが幸福度の高まりを感じたそうです。また、最も幸福度が高まったのは、1日に5つの親切をしたときなのだとか。
ではなぜ、親切な行動を行うと幸福感を得られるのでしょうか。それは、親切な行動は、脳内で化学物質に変化を起こさせるからだそうです。プラスの感情にかかわる「ドーパミン」や「セロトニン」、絆のホルモンと言われる「オキシトシン」の分泌量が増し、脳内の天然モルヒネと言われる「エンドルフィン」が作られるからだそうです。これら脳内の科学変化は、親切な行いの正しさや、人との関わりによって生まれるものなのだそうです。

今日からできる!小さな「親切」行動をご紹介

誰かに親切にすることで、相手を喜ばせるだけなく、自分自身をも幸せになるのであれば、こんな嬉しいことはありませんね。今日から意識して親切な行いをしてみてはいかがでしょうか。また、1日の終わりに自分がどんな親切を行ったのか、何回行ったのかを数える習慣をつけると、自己肯定感が増し、更に幸福度が高まるそうです。これは老若男女関係なく効果が期待できるのだとか。
それでは、今日からできる「小さな親切行動」をご紹介します。1.店員さんに「ありがとう」と言う。2.誰かを褒める。3.誕生日の人にハッピーバースデーを歌う。4.誰かにお礼状を書く。5.バスや電車でお年寄りに席を譲る。6.献血する。7.誰かのためにプレゼントを買う。8.友人や家族にハグする。9.あとから来る人のためにドアを開けて押さえておく。10.誰かに親切なことをしてもらったら、別の誰かに親切にする。
まずは、1日1回、1週間を目標にチャレンジしてみましょう。親切にすることを楽しむのが大切です。できれば、毎日違う種類の親切をしてみてください。慣れてきたら、範囲を広げたり、匿名で行う親切などに挑戦してみましょう。あなたの親切な行いがプラスの連鎖を生んで、何人もの人が今日、幸福感を得られるかもしれません。今日は、「小さな親切」運動スタートの日、です。
出典:有機化学博士 デイビッド・ハミルトン「親切は脳に効く」(2018)サンマーク出版