発達障害を持ちながら働く人にとって、職場における障害への理解が欠かせない。だが、発達障害は特性に応じて、求められる配慮が異なるため、そのあり方に当事者も企業も課題を抱えている。どのような環境や仕組みを作っていけばいいのか。2022年12月19日号の記事を紹介する。
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合理的配慮は、障害者雇用か一般雇用かにかかわらず提供が義務付けられているが、一般雇用ではさらに周知が進んでいないのが現状だ。特に発達障害の場合は、外見ではわからないため、理解が得られにくく、「わがまま」として受け取られてしまうケースもある。
YouTuberとして活動するえりかんさん(21)は5年前にADHD(注意欠如・多動性障害)と診断され、その後、「境界知能」と呼ばれる軽い知的障害があることが判明した。高校在学中からさまざまなアルバイトをしてきたが、苦労することが多かったという。
皿洗いのバイトでは洗い終わった皿を種類ごとに分ける必要があったが、どれも同じ皿に見えてしまう。調理のバイトでも、見本通りに料理の盛り付けをするのが苦手だった。生クリームが上手に絞れなかったり、右に並べるべきものを左に並べてしまったり。視覚での認知が弱く、手先が不器用な特性ゆえのミスだったが、店に迷惑をかけるから、とバイトは辞めた。
面接などで特性について伝え、当初は配慮をしてもらっても、接しているうちに障害があることを忘れられてしまうことも多い、とえりかんさんは言う。
仕事ができるようになりたくて、不注意や多動性の症状を緩和する薬を飲んだこともある。
「薬を飲んだら覚醒状態になるんですが副作用がひどくて。薬を飲まず、ハンディはハンディのまま、自分と向き合いながら働いていけたらと思っています」
■個別に調整する必要
職場における配慮のあり方について、就労移行支援サービスKaienの代表・鈴木慶太さんはこう説明する。
「職場での合理的配慮の提供が2016年に義務化されるまでは、『配慮』というのは、“画一・事前”の方式でした。例えば、多機能トイレや自動扉があれば障害があっても働きやすい職場になるだろう、と事前に用意しておく。一方で発達障害の場合は事前に画一的には対応できません。それぞれの特性にグラデーションがあり、望む配慮も異なるので、本人がこうした配慮が欲しい、とその時々でアピールし、“個別に・事後に”調整していく必要があります」