5月も最終週を迎え、そろそろお疲れモードの新人も多いのではなかろうか。え、話の通じぬ新人に疲れてる上司のほうが多い?
岩瀬大輔『入社1年目の教科書』は2011年の本である。しかし版を重ねていまや46万部。ビジネス上の最低限の心得を説いた自己啓発書だけど、新人じゃなくても冷や汗タラーッだ。
<(1)頼まれたことは、必ずやりきる><(2)50点で構わないから早く出せ><(3)つまらない仕事はない>。以上が仕事の3原則。特に(2)は新人が勘違いしやすいところよね。レポートや企画書をいつまでも抱え込んでる若手って多いじゃない?などと余裕で読みはじめたのだが、具体的な50のアドバイスの冒頭でもう躓く。
<何があっても遅刻はするな>。そ、そりゃそうですよね。しかし私は、ものすごく遅刻の多い新人だった。<当たり前のことができない人物という、悪い意味で目立つような行動をしてはいけません>。
はい、すんません。
<メールは24時間以内に返信せよ>。わっ、これは現在進行形でヤバイよ。面倒な案件ほど先延ばしにする悪い癖。<「明日までに返事をします」「やっていません」「これからやります」という途中報告でも構いません><対応が早いだけで2割増しの評価を得られると考えていいと思います>。
ですよねえハハハ。
以下<カバン持ちはチャンスの宝庫><頼まれなくても議事録を書け><アポ取りから始めよ>。すべて私の苦手項目。会社員として生き残れなかったはずだわ。
著者は輝かしい経歴を誇るエリートビジネスマン。50の心得をすべて実行できたら、きっと出世コースに乗れるだろう。<朝のあいさつはハキハキと>なんて「小学生か」な心得も、今般の若者に手を焼く年長者は「ほんとだよ」と思うだろう。ただし、本書が通用するのはマトモな会社の場合である。社員研修に使ったり部下に読ませたりするのも微妙。パワハラになりかねない。<宴会芸は死ぬ気でやれ>も、いまじゃパワハラですからね。ご用心。
※週刊朝日 2019年6月7日号