ワイキキビーチに沈む夕日を前に。「ハワイに物件を購入しようか迷っているお客さんは、この夕日を見て決める人が多い」という(撮影/熊谷晃)
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ワイキキビーチに沈む夕日を前に。「ハワイに物件を購入しようか迷っているお客さんは、この夕日を見て決める人が多い」という(撮影/熊谷晃)

 いつもポジティブ、華やかな彼女にもずっと抱えていた大きな悩みがあった。

 それは夫の浮気だった。ハンサムで、離婚を手がける地元では高名な弁護士だった夫には、常にガールフレンドがいた。

 彼女が車を運転していた時のことだ。ふと歩道に目をやると、夫が女性と共にジョギングをしているではないか。驚いて見ていると、二人は抱き合ってキス──。

「急いで車を止めて走り寄って、『This is my husband』って言ったの、私。彼は、これは知らない女性で向こうから抱きついてきた、とかなんとか言ってたけど……」

●昨年8月に2度目の離婚息子との時間を取り戻す

 ガールフレンドの家に「彼と別れてほしい」と言いに行ったら、夫が半裸で出てきたこともあった。写真を整理していたら知らない女が写っているものが出てきたことも……。

 それでも別れなかったのはなぜか。賢く、話題も豊富な彼が魅力的だったことももちろんあるが、「2度も離婚するのが嫌だった。恥ずかしいじゃないですか。1回失敗しているのに、なんでもっと吟味をして選ばないのか、また失敗するの? って。彼を変えたいって思ったけど変わらなくて、じゃあ自分を変えよう、強くなろうって思って」

 40代後半になってトライアスロンに挑戦したこともあった。

「仕事に救われた部分ももちろんある。泣きながら仕事に行った時も何度もあったし」

 背中を押したのは、18年1月の母の死だ。

「母をもう心配させることはないって思ったの。離婚したら親がかわいそうって思ったから」

 5月、自分の中で何かがぷつんと切れたように離婚を決意する。「捜さないで」と書き置きをして着の身着のまま家出をして親友の照子の家に身を寄せ、つぶやいた。

「照ちゃん、私幸せになりたいの。何をやっているんだろう、私。ばかみたい」

 照子は言う。「さっちゃんは明るくて楽しい人だけど、彼のことではずっとずっと苦しんでいた」

 彼のことはまだ愛していた。「自分の腕をもぎとるようにして出てきたの」。でも、離婚を決めたら「青空が見えた気がした。私、ずっと自分に嘘をついてたのよね」。

 8月に正式に離婚、翌月に自分の居を構えた。庭にプールもある広い一戸建ての新居には、テレビのプロデューサーやキャスターを務める息子、泰三(40)がしょっちゅう顔を出す。泰三もホノルル市内に家族と住んでいるが、彼女の家で晩ご飯を共にすることもしばしばだ。

 泰三は「母はいつも自分を気にかけてくれたし、華々しく活躍する母は美しく、誇りだった。さみしいと思ったことはない」と言うが、彼女は泰三が高校生の時に「どうしてうちは普通じゃないの?」と言ったことが忘れられない。

「ごはんを作ってあげられないこともあったし。彼の友達の家は家族そろってごはんを食べていたわけじゃない? だから今は失った時を取り戻している感じで、とても幸せ」

●ハワイは不動産ブーム馬力を出してもう一稼ぎ

 18年は公私ともに激動だった。6月に自分の会社を日本の不動産大手オープンハウスグループに売ったのだ。もちろん彼女は創業者兼CEOとして働き続けている。

「70歳を前にして、イグジットプランを考えた。ここまで築き上げてきたブランドを大事にしたいと思ったの」

 オープンハウス創業者で社長の荒井正昭(53)は彼女を高く評価する。

「ハワイで売り上げ2位になるなんて、すごいこと。最近ではサチさんを指名で契約に来る」

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