群ようこといえば、粋で飾り気のないエッセーが特徴だろう。

 6回の転職を経て、「本の雑誌社」に就職。本好きが見込まれ、憂さ晴らし程度に書いた書評が評判を呼び、作家デビューする。時はバブル前夜。「こんなことは長いこと、続かないぞ」と自分を戒めながらも、いつのまにか売れっ子になり、気づけば出版不況も切り抜ける。同業者や編集者との交流や税金対策から作品の誕生秘話などまで、約40年をふり返る。

 家族との距離感が興味深い。母と弟に高額な住宅ローンを組まされて家を建てても、なぜか住まわせてもらえない。文句を言いながらも支払いのために書きまくる。景気が過熱しようが冷めようが、浮かれず、ひたすら書いていた。時代が変わっても、群ようこは何も変わらなかったのだ。(栗下直也)

週刊朝日  2019年5月24日号