2017年刊行の前著『心とカラダを整える おとなのための1分音読』が大ヒットした、大東文化大学文学部准教授・山口謠司さん。続編となる『もっと心とカラダを整えるおとなのための1分音読』では、夏目漱石の『こころ』や、中島敦の『山月記』など教科書でおなじみの名作を、"1分を目安に読める"ボリュームで55篇紹介しています。
 「音読」には、黙読にはない利点が盛りだくさんとする本書ですが、その意外な効用が、「誤嚥(ごえん)性肺炎」の予防。高齢者に多く、今や国民病ともいわれる誤嚥性肺炎ですが、音読習慣によってのどを使うことにより、のどの筋肉が衰えるのを防ぎ、発症リスクを下げることが期待できると言うのです。
 「のどの筋肉は年齢とともに衰えていきます。本来食道に入るべき食べ物が誤って気管に入ることで起こる誤嚥性肺炎は、年を重ねるとともに気をつけたい病気のひとつです。予防のためにも、音読でのどの筋肉を自然に鍛えましょう」(本書より)
 本書では、歯切れのよい小説や漢詩はもちろん、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』といった歌舞伎のセリフや、『人形の家』のような戯曲なども収録しています。ただ読むだけではなく、歌舞伎や演劇の舞台を鑑賞したり、たとえば『金色夜叉』の銅像がある熱海など、文学作品のゆかりの地を実際に訪れたりすれば、音読の楽しみも倍増すると提唱しています。登場人物に成り切ったつもりで、歯切れがよいセリフを楽しんだら、ぜひ作品の舞台にも足を運んでみてはいかがでしょうか?