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洗濯物干し場を撮っても 時代を写し込んでいる
木村伊兵衛が写真に開眼したのは1929年、花王石鹸に入社し、広告部長の太田英茂との出会いからという。太田は仕事に注文はつけなかったが、写真でなければ表現できないものは何でも写せ、と言った。それで、木村は生活が出ているものはなんでも写した。
太田の宣伝は一般的なモデルを使わなかった。人々の生活を感じる木村の写真を使い、 新聞全面に広告を打つなど、斬新な手段を使った。
当時学んだ光景が脳裏に強く刻まれていたのか、戦後の木村の作品の中にも2回ほど洗濯物干し場が登場している。昭和28年江東界隈と、今回の作品である。
この東京・向島で撮ったものには、物干し場の片隅に、夜のお店に出かける和服姿の女性が写っており、バブル時代が写し込まれているのが興味深い。珍しく8コマ撮っているが、狙いが定まらず、和服姿の女性と干し物は1コマしかない。
選・文=田沼武能(たぬま・たけよし)
1929年、東京・浅草生まれ。49年サンニュースフォトス入社と同時に、木村伊兵衛氏に師事。アメリカのタイム・ライフ社との契約を経て72年に独立。日本写真家協会の会長を20年間務め、現在、日本写真著作権協会会長。
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