無事に卒業できたのが半数以下、家庭の崩壊、経済的な困窮、自殺未遂。大阪府内の公立高校で、<ヤンチャな>生徒14人と交流し、彼らの卒業後の人生も追跡した。

 14人は外見や精神性に同一性を見いだせるが、高校中退、卒業後の生活はかなり異なる。同じ職に継続して就いている者もいれば、行方知れずの者もいる。その差異は個人的に習得したものに起因するというよりは、親の代からの地域共同体とのつながりに求められるというから興味深い。<ヤンチャな>子は同じ属性に見えても実は一枚岩ではなく、社会的亀裂があることを著者は浮き彫りにする。

 貧困の再生産をいかに断ち切るかは日本の大きな課題だ。机上の貧困論でなく、生身のやりとりから貧困の現実を掘り起こした本書から学ぶことは大きい。(栗下直也)

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号