「駐妻」として渡印後にビジネスビザを取得し、起業した見上すぐりさん(左から2人目)。2021年9月、新アプリ開発のためにタミルナード州を訪問し、エンドユーザーである地域の母親たちにインタビューをした(写真:見上すぐりさん提供)
「駐妻」として渡印後にビジネスビザを取得し、起業した見上すぐりさん(左から2人目)。2021年9月、新アプリ開発のためにタミルナード州を訪問し、エンドユーザーである地域の母親たちにインタビューをした(写真:見上すぐりさん提供)

 世界有数の経済大国・インドで起業する日本人が増えている。混沌とした不思議な国というイメージの転換が、ビジネス面では日々加速している。激しい競争の中で成功する秘訣は粘り強さとニッチな分野への挑戦だという。AERA 2022年12月19日号の記事を紹介する。

【地図】インドの人口、面積、宗教は?

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 インド・ビジネス・センター(東京都千代田区)の島田卓社長(74)は、こう話す。

「インドでは、重要な契約書類を作成した翌日にはCEO(最高経営責任者)のサインが入って戻ってくるなど、その迅速対応に学ぶものは多い。このままでは日本は置いていかれる」

 07年からインドで宅配寿司ビジネスを展開する「LA DITTA(ラ ディッタ)」の小里博栄社長(51)は、

「インドほど仕事がしやすい場所はない」

 と力説する。特に気に入っている点はヨーロッパ、アジア、アフリカに近いことだ。時差は日本と3時間半、英国とは5時間半。各地へすぐに移動できることもビジネスをする上で重要なポイントだという。

 同社は現在、4都市10店舗に拡大し、毎月約12万食を売り上げている。平均単価は日本円にして約1800円。これまでの日本食レストランは非常に高額だったが、仕入れやメニューの工夫によってリーズナブルな値段を実現させたことが成功につながっているという。

■「相当な忍耐力が必要」

 とはいえ、インドで起業することはそう簡単なことではない。兵庫県立大学の福味敦教授(インド経済論)はこう話す。

「マーケットの規模を考えると行かない手はないでしょう。ただ、大半は失敗するし、これまで進出した日本企業も10年かけて、ようやく実り始めると聞く。相当な忍耐力が必要です」

 だまされたり、インド人スタッフとの意思疎通に苦労したり。州ごとに制度が違うことも多く、その制度も朝令暮改。しかも、競争相手は地元企業だけではない。神戸大学の佐藤教授は、

「韓国、中国、そして欧米の資本が続々と参入している。競争は非常に激しい」

 と指摘する。そんな中で起業を成功させるポイントは粘り強さとともに「ニッチ」な分野に目を向けることだろう。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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