一般人が気づいていない、あるいは見て見ぬふりをしている、マンションをめぐる「やばいこと」を列挙している。あえて悲観的な側面ばかり取り上げたと著者が言っているとおり、読んでいると背筋に震えが走ってくる。

 35年ローンで購入した新築マンション。入居当初は夢のような気持ちだとしても、ローンを完済したときに手元に残るのは、資産価値もろくにない老朽化したマンションだという事実。それをどれだけの人が自覚しているかと著者は問う。

 実は業界に蔓延している施工不良。1962年に制定されたきりで現状に対応しきれない穴だらけの区分所有法。管理組合を牛耳って私腹を肥やす万年理事長。放置すれば、あらゆるマンションはいずれ廃墟と化す。そんな最悪の事態を回避するための処方箋となる一冊。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年4月12日号