「さあ、マヤ。仮面をかぶるのよ」──女優として役になりきる北島マヤが、自己暗示的につぶやく名セリフですね。
1976年から連載が続く、美内すずえ作『ガラスの仮面』。
コミックスの既刊は49巻、累計部数、5000万部を超える国民的ベストセラーですが連載は数年前から中断され、続報もないとのこと。
今日は『ガラスの仮面』のヒロイン、北島マヤの誕生日。
連載40周年を超えた今も人気を失わず、国をあげて連載が待たれるといっても過言ではない、同作をふり返ってみましょう。

少女マンガの金字塔
少女マンガの金字塔
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雑誌連載と単行本(コミックス)でストーリーががらりと変わる?

1976年「花とゆめ」に連載がスタートした『ガラスの仮面』は、開始当初より超ベストセラー。43年経った今も変わらぬ人気をはくしているものの、紆余曲折あったようです。
作者が「花とゆめ」の雑誌版からコミックスにする際、大幅な改稿をおこなうようになり、長期休載を経て「花とゆめ」の連載を1997年に事実上終了します。
完全書下ろしコミックスの発売などを経て、2008年より「別冊花とゆめ」連載が再開されましたが、その掲載頻度はかなりまちまちだったようです。
2018年7月号をもって「別冊花とゆめ」が休刊。連載作品や常連作家などの今後の掲載予定のリストに『ガラスの仮面』がなかったため読者から不安の声が上がり、作者が公式ツイッターで「必ず最終巻まで描き続けます」とのコメントをおこなったとか。

『ガラスの仮面』(1巻)身内すずえ 集英社花とゆめCOMIXより 
『ガラスの仮面』(1巻)身内すずえ 集英社花とゆめCOMIXより 

北島マヤ vs. 坂田三吉

作者の美内すずえは大阪府出身。16歳の時、『山の月と子だぬきと』で「別冊マーガレット」で金賞受賞し、高校生漫画家としてデビューしました。
東映映画、勧善懲悪の「美剣士シリーズ」を好きでよく見ていたそうです。
ところが10歳の時に見た、三國連太郎主演の「王将」──。浪速(なにわ)の天才的な将棋指し、坂田三吉をモデルにした映画ですね。
それは、作者が今まで見ていた「美剣士シリーズ」とは全然違っていました。
「薄汚い将棋指しのおっちゃんの話で、こんな人がいるんやな、と子ども心に不思議に思って、ずっとひっかかっていたんです。そして『ガラスの仮面』の連載を始める前に、それまでは外国少女ものが少女マンガの主流だったんですけど、日本を舞台にした日本の女の子の話を描こうと思ったんですね」
北島マヤ──父を早くに失った母子家庭。
母娘ともども、大衆食堂に暮らしながら働いていた。
勉強も運動も得意ではない。手先も器用ではなく、間が抜けていて鈍(どん)くさかった。美人でもない。
そんな彼女が、他人からは病的にさえ思われるほど好んでいたのが「芝居」だった。
──言われてみれば……「北島マヤ」と「坂田三吉」、重なるところがありそうですね。

村田英雄が歌った「♪吹~け~ば飛ぶよ~な」
村田英雄が歌った「♪吹~け~ば飛ぶよ~な」

黒電話→携帯電話→スマホへ

『ガラスの仮面』は連載40周年を越える超長寿作品ですが、劇中ではほんの7年程度しか経過していません。
作品内容が普遍的なため物語には違和感がないとしても、背景に描かれる小道具はそういうわけにはいきません。
連載当初、劇中に出てくる電話はダイヤル式の黒電話、テレビも箱形のブラウン管……。
現実が2000年を越えて携帯電話が普及していくと、登場人物達も携帯電話を持ち始め、そのギャップにファンは衝撃を受けたようです。
『ガラスの仮面』42巻で携帯電話が突如、登場します。
作者は、「ケータイが登場したとき、批判は予想していました。最初は黒電話で、途中から白っぽい電話になり。外でかける電話も最初は10円玉を入れて、テレカを入れて、そのうちケータイが流行り始めて、困ったなと……」
「最終回を読まないことには、死ぬに死ねない!」熱狂的ファンが全国にいるこの『ガラスの仮面』(ファンの間では略称『ガラかめ』)──作者には、読者の想像もつかない、いろいろな苦労がありそうですね。

時代を感じさせますね
時代を感じさせますね

49巻が発行されたのが2012年10月

誕生日を迎えても年を取らない北島マヤと違い、年を取るのは読者だけではありません。
25歳で『ガラスの仮面』をスタートさせた作者、美内すずえ(敬称略)も67……いえ、作者は北島マヤと同じ2月20日生まれで本日、68歳に……。
この間も俳優、三上博史さんとNHKのトーク番組に出演してお元気なようですが、『ガラスの仮面』は……? といえば、2012年に49巻が出たっきり……。
新刊の出るまでの年数がどんどん長くなっているという情報もあります(ちなみに、50巻は当初2013年に発行される予定だったそうです)。
マヤと「紫のバラのひと」こと、速水真澄の恋のゆくえ。そして幻の名作、『紅天女』の後継者をめぐるマヤと姫川亜弓との対決もさすがに終盤を迎え、『ガラスの仮面』は50巻で完結するのでは……とも言われています。
『ガラスの仮面』に使われる劇、劇中劇には、作者自身のオリジナルも多く、「昔、いつか作品にしようと創作ノートに書き溜めてあった 物語ばかり」とのこと。
作中劇は台本から作るそうですから、それだけ時間がかかるのも、面白いのも納得ですね!
四十年余の長きにわたり、読者を飽きさせず、虜(とりこ)にし続ける『ガラスの仮面』……。最終章を楽しみに待ちたいもの。
それでも「本当に終わるの……?」と心配する方のために、作者のこんな力強い言葉をお送りしましょう。
「ラストは20年以上前から、最終ページの構図まで決まっています。なぜそこまで行き着かないの?というのが問題で……(苦笑)」

図書館で予約貸し出しも可
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