個人や保護団体の「野良猫の殺処分を減らしたい」という熱意に頼ることが多かった保護猫活動。最近はそうした活動に寄与しようという企業も出てきた。人も猫も幸せに。「保護猫活動フレンドリー」な会社の目指すものとは?
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オフィスを猫たちがゆうゆうと歩いている。不動産や建築に関するシステム開発を主業とするIT企業、ファーレイ(東京都中央区)の一室。猫たちはみんな、従業員らの飼い猫だ。常時、5~6匹が「出社」しているという。
ファーレイでは会社を挙げて猫を飼うことが奨励されており、社員の半数が「猫飼い」だ。
代表取締役の福田英伸さんは話す。
「猫を飼う人が増えれば、野良猫となって殺処分される猫が減ることにつながりますから」
いわば間接的な保護猫活動。猫を飼うための補助制度も整備されている。保護猫を引き取って育てる社員には月5千円の「猫手当」(飼育頭数にかかわらず定額)が支給される。5千円という額は、福田さんが「フードや砂代ぐらいはまかなえるだろう」と概算した。
取締役の細川真樹子さんは10年前、目も開かない保護猫2匹を引き取った際、オフィスで3時間おきにミルクを与えて育てた経験がある。
「この会社で働いていたからこそ、あの子たちを迎える気になれたのだと思います」と話す。
猫たちには昼と夜、食事やおやつの「福利厚生」も。フードは猫たちの好みと体調に合わせ、数種類を会社で定期購入。オフィスは賃貸だが、猫たちが登ったり隠れたりできる仕掛けも工夫を凝らして設置している。
実は取材の3日前、福田さんの愛猫、V(ヴィー)が慢性化膿性肝炎で虹の橋を渡っていた。1カ月ほどの闘病の間、社員は総出でセカンド、サードオピニオンを求めて病院を探したという。死んだ時はみんなで泣いた。
猫が職場にいることで楽しさを享受できる一方、こうした悲しい思いをしたり、仕事が手に着かなくなる従業員が出たりもする。それでも福田さんは「この取り組みをやめようと思ったことはない」という。猫を飼う人への支援が殺処分減に寄与し、猫の幸せにつながるという強い信念があるからだ。