広告マンから小説家に転身した著者が、バブル前夜から現代までの広告業界を舞台に書き下ろした長編一代記。主人公は業界の「帝王」だ。
広告代理店「連広」を率いる城田。泥臭い営業を最重要視し、メディアや政財界との太いパイプを背景に、社内外の敵を妨害して広告主の「何でも屋」に徹する。トモダ自動車をめぐる他社との競争や都知事選での暗躍、五輪のスポンサービジネスの仲介といった広告代理店の幅広い仕事ぶりを示すエピソードの数々は生々しい。城田は大勝負のたびに奇策を講じ、勝ちをたぐり寄せる。
終盤では、無理を通すことが常態化した業界が抱え込んだひずみが強調される。現代日本の問題にも通じる、城田の「誤算」とは何だったのか。著者ならではの臨場感と問題意識に貫かれた一冊。
(内山菜生子)
※週刊朝日 2019年1月18日号