ホテルを改装した「ご安置ホテルリレーション」(写真はリレーション提供)

 最近は参列者が故人の配偶者と子ども、子ども夫婦だけなど、2人のケースも少なくない。

「どう弔うかは土地柄にも左右されますが、杉並区周辺では、規模は小さくてもきちんと式をして送り出したいという人が少なくありません」

 この施設では、遺体の一時保管や家族葬だけでなく、遺品整理の相談にも応じている。

「地域に根ざして葬祭業を営み、地域のお客様の困りごとに寄り添っているうちに、役割が広がっていきました」

 JR大阪駅から徒歩圏内の「ご安置ホテルリレーション」(大阪市北区)は12年にオープン。ホテルだった建物を改装し、遺体の一時保管や家族葬が行える施設にした。

■安置ホテルで時間を確保

「10年ほど前から首都圏で死亡者数に対する火葬炉不足が問題になり始め、大阪もいずれ同じ問題が起きるかもしれないということで、当初はご遺体安置に特化した施設をつくろうと考えました」

廊下や各部屋の入り口がもともと広く、葬儀施設に転用しやすかったという。6階には、収骨時間までの食事や法要などで使える部屋(写真はリレーション提供)

 そう話すのはリレーション代表取締役の栗栖喜寛さん。6階建ての建物で、13体の遺体を安置することができ、2階には最大15人の式場スペースがある。3~5階の各部屋では、故人と一緒に滞在することも可能だ。

 オープンから10年が過ぎたが、大阪の火葬場は新型コロナウイルスによって亡くなる状況を除いては、長くても数日の待機で対応できているという。ただし、冬場などは火葬場の稼働状況が過密になるケースも少なくない。それは首都圏も同じ状況のようだ。

「現状では、火葬場待ちというよりは、核家族化が進み、家族全員が集まるまでの期間、ご遺体をお預かりするケースが多いです」(栗栖さん)

 施設周辺にはマンションや学校などがある。ホテルを葬儀施設に改装するにあたり、近隣から懸念の声もあったそうだ。

「家の近くにこのような施設があることに抵抗があるというお気持ちはわかります。なので、みなさんの声に耳を傾け、古くからある宮型霊柩車は使用しない、式場案内看板は出さないなど、一つずつすり合わせ、ご理解いただけるようになりました。『どうせわしらもいつかお世話になるしな』とおっしゃる方もいて、今では近隣の方々に多くご利用いただいています」(同)

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