
家族が亡くなると、病院からの遺体引き取りに始まり、葬儀の打ち合わせから火葬まで、心身ともに疲労した状態で多くを決めなくてはならず、大変な思いをした人は少なくないだろう。
また、葬儀会社の言われるままのプランで葬儀を行ったり、通夜や告別式を行わない「直葬」で簡易に済ませたりして、「きちんとすればよかった」と悔やむ遺族も多い。
栗栖さんは、そんな人を多く見てきたからこそ、「安置ホテル」を活用して時間的余裕を確保し、故人との別れのプロセスを大切にしてほしいと思っている。
「現在はドライアイスなどさまざまなご遺体保存の方法があり、それらを活用したり、当施設のような『安置ホテル』を利用していただくことで、生前とあまり変わらないお姿で、数日間故人との時間を過ごしていただくことができます。よりお別れの時間を確保したいというニーズが高まれば、日本でもエンバーミングが普及するのではないかと考えています」
エンバーミングとは、遺体に保存処理を施し、必要に応じて修復することで長期保存を可能にする技術のこと。欧米では広く普及し、日本でも認知度が高まりつつある。血色を良く保ち、生前に近い状態にできるため、故人とゆっくりお別れすることが可能となる。
しかし、費用が高い、処置のために遺体にメスを入れる、エンバーミングを行える施設が少ないといった理由から、本格的な普及にはまだ時間がかかりそうだ。
■1カ月以上もの長期保存を実現
一方で、エンバーミングやドライアイスによる保存とは異なる、新たな遺体保存装置が注目を集めている。
それが東京都日野市の会社「クーロン」が開発した「ペルソナ」だ。

装置内の温度をマイナス4~0度に保ちつつ、独自技術で遺体を凍らせずに保管できる。除菌・脱臭機能も備え、1カ月以上の長期保存を可能にした。ドライアイスを使わないため、費用も抑えられるという。
開発したのは、同社代表で税理士の阪口茂さん。顧客の業務用スーパーで、生鮮食品の鮮度を保つ保冷ケースを見て、「亡くなった人にも応用できないか」とひらめいたという。