最近でいえば仁左衛門の女性関係が週刊誌に暴かれていたが、そんなことは別に我々ファンが知りたいわけではなく、タマさまはタマさま、ニザさまはニザさまであればいい。デカデカと活字で記された見出しから見る気もせず、そのせいか仁左衛門の記事は後追いもなかった。
恋愛の一つや二つ、芸の肥やしでこそあれ、今さら取り上げて記事にすべきものでもなかろう。いちいち取り上げ出したら、際限なくひろがっていく。
もういいかげん、そういう記事にピリオドを打ってはいかがだろう。
特に現代劇ではない、伝統的な時代物では夢を見させてほしい。
プライベートはプライベート、噂では知っていても、そっとしておいてほしいものもある。
何でもかんでも明らかにするのではなく、どこかでけじめをつけて現実と架空の世界を楽しみたいものだ。現代の道徳をあてはめては、とても歌舞伎など楽しめない。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年12月30日号