理系オンチだとタイトルだけで怯えるが、門外漢も引き込む生命科学の入門書となっている。アリストテレスにはじまり、コッホ、ダーウィン、メンデル、現代のバイオ研究までの歴史がコンパクトに語られる。今日うまいワインやビールが飲めるのはパスツールのおかげだし、17世紀のオランダの呉服商レーベンフックの功績もあり、小中学生は顕微鏡で微生物を観察できる。

 著者の柴井博四郎氏は、「生物の神秘にふれて考えて実験してみる素養を養わねばならない」と書く。信州大、中部大で教授をつとめ、現在は東京のNPO法人「バイオ未来キッズ」の理事。学童を集めて、乳酸菌でヨーグルトを作ったり、手作りの顕微鏡で観察するなどの実習を重ねている。バイオ分野の人材育成を目指すNPO法人で、本書もその目的で刊行されている。

週刊朝日  2018年9月14日号