今年は平成30年。平成自体があと1年少しで終わることも決まっている。平成を振り返る本が今年は次々出てくるんだろうね。
ということで原田曜平『平成トレンド史』。博報堂で長く若者文化を研究してきた著者が、経済や消費からこの30年を振り返った本である。テレビ番組やCMからベストセラーまで話題は豊富だが、平成をリードしたのはやっぱりデジタル機器だったようだ。
経済がイケイケだった時代(1989年)に平成を迎えた日本。当時はインターネットも携帯電話もなかったが、気分は享楽的だった。が、90年にバブルが崩壊すると、93年頃からその影響が広がりはじめる。「就職氷河期」が流行語になったのは94年。阪神・淡路大震災とオウム真理教事件で揺れた95年は暗かったが、96年に入ると景気は緩やかに回復し、ポケベルやPHSを巧みに操る女子高生が消費の主体に躍り出る。さらにウィンドウズ98の発売やiモードサービスの開始でパソコンや携帯電話が普及。やがてネットが人々の意識や行動を支配して……。
興味深いのは、SNSをめぐる若者たちの最近の動向だ。インスタグラムが世界中の若者たちに受けたのは「ファッション雑誌のような世界観」だからだと著者はいう。ハロウィンの盛り上がりも肉のブームもビジュアル重視のインスタ消費。ところが最近、こんな言葉がよく聞かれるようになってきた。〈「炎上はイヤだ」、「リア充アピールも疲れた」、「『いいね!』するのも面倒くさい」〉
ワハハ、なんかわかるなあ、それ。だったら投稿しなけりゃいいわけだが、SNSとともに育った世代は〈自己承認欲求は高〉く〈何かを周りにアピールしたい気持ちは抑えられないのです〉。
インフレの昭和とデフレの平成。1億総中流の昭和と格差の平成。昭和のマスメディアと平成のデジタルメディア。平成は昭和と対照的だった。〈平成は「昭和から脱しようとした時代」でした〉と著者。前の時代を否定しようと格闘したが、次の段階にはまだ進んでいないってことですかね。
※週刊朝日 2018年2月16日号