出会い系バーに行った件を読売新聞に報じられた前文部科学事務次官の前川喜平さんは「女性の貧困について扱った番組を見て、話を聞いてみたいと思った」と説明した。これをウソと決めつけた人たちは貧困問題にも関心が薄いのだろうと私は勝手に思っている。
雨宮処凛『女子と貧困』は20代から60代まで8人の女性に取材した本。女性が抱える貧困の現実を突きつけられる思いがする。
福島第一原発の事故で福島県から埼玉県に自主避難した河井さん(35歳)。子どもの頃は母親にほとんど放置されていた。
〈給食が一食目でした。朝ご飯ってものがあること自体、知らなかった〉。養護施設に入ったのは中学3年生のとき。その後、高校を出て結婚し、2人の子どもも授かったが、その矢先の東日本大震災。夫とも離婚した。現在は生活保護を受けながら週2~3日のパート労働を続けるが、将来が不安。
生活保護世帯で暮らし、精神障害を抱えながら作業所に通うミカさん(20代後半)。母子家庭で育ち、21歳で統合失調症と診断された。通信制の大学に行きたいと担当ワーカーに相談したら、〈福祉課としては認められない〉。
読んでわかるのは、第一にこの国の福祉政策がいかに貧しいか、第二にそれでも利用できる制度はまだまだある、ということだ。
自身もキャバ嬢の経験がある著者は、25歳で文筆業に転じたとき〈やっと『女』以外の部分で必要とされる!〉と思ったが、出版業界もセクハラの巣窟だった。
〈貧乏って絶対伝染するなっていつも思ってて〉と語る河井さん。〈学歴と貧困って、すごく関係するものだから〉と語るミカさん。セクハラや育児ハラスメントと貧困は根っこのところでつながっている。男並みに働き、家事も育児も介護もこなし、そのうえ「セクハラをうまくあしらう技術」まで求められる日本の女たち。〈だったら時給払えよ、と元キャバ嬢の私は思う。セクハラあしらい料として、普通のバイトよりは高い時給を貰って当然ではないか〉。この現実をまず知るべきなのだ。
※週刊朝日 2017年9月1日号