安倍政権が、デフレ脱却を掲げて企業に賃上げを求める「官製春闘」を展開、「働き方改革」では「同一労働同一賃金」などの、“労働者寄り”の政策を打ち出す中で、連合は政府に呼吸を合わせてきた。政府、経団連らとの「政労使会議」や、「働き方改革実現会議」など、官邸主導で作られる舞台に乗って、「実」を取ろうという路線が続いてきた。

 今回の「残業代ゼロ合意」への流れができる時も、政府側から働き掛けがあったという見方がある。3月末から事務局レベルで政府と調整が始まっていたことは、神津会長も認めている。

 そのころ、働き方改革実現会議で、連合が求めた「罰則付きの残業時間規制」が決まり、それを盛り込んだ労働基準法改正案が国会に提出されることになった。

 こうした中で、2年近くたなざらしのままの「高プロ」創設の労基法改正案と、「罰則付き残業規制」を入れた労基法改正案が「一本化」されそうだとの懸念が語られるようになったという。

「法案が一本化されたら対応が難しい。高プロは反対だが、残業時間の上限規制は導入したい。いまの状況では政府が一本化した法案を強行採決しようと思えば、やれる。それなら、高プロの修正を求めて、話し合いで取とれるものは取ろう」

 逢見事務局長を中心に「高プロ容認」の現実路線の考えが強まったという。

 だがもともと、罰則付きで長時間労働を抑えようという制度と、「残業代ゼロ」で長時間労働を助長しかねない制度を一緒に認めようというのは、水と油の話だった。

 しかも国会審議すら始まっていない段階で「条件付き容認」に転じれば、組織内外の強い批判を浴びることは十分、予想できた。

 連合の威信も傷つけることになったドタバタの混乱を招いた原因は、執行部の甘い見通しだった。

「どこかで妥協は必要かもしれないが、政府と、労働者の権利や利益を守る連合とは立場が違う。表で戦うポーズをとって、裏では妥協するならともかく、表も裏も政府寄りになったのでは、労働組合の存在価値がなくなる」と関係者の一人は吐き捨てる。

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