1月10日に総務省が発表した東京都区部の2022年12月の消費者物価指数(中旬速報値)は前年同月比4.0%の上昇だった。4%台は何と40年8か月ぶりだ。
特に、エネルギー(電気・ガス代など)が26・0%、生鮮食品を除く食料が7.5%と生活必需品目の伸びが高い。これらの品目への支出割合が高い低所得層にとって、この物価高は大打撃だ。
これに対して緊急の支援が必要なことは当然だが、一方で、より根本的な解決策として重要なのが賃上げだ。物価が上がってもそれを超える賃上げがあれば、問題ない。
しかし、実際には、長い間のデフレの影響で、賃上げよりも雇用確保という労働組合側の姿勢が定着し、「物価上昇を超える賃上げ」という当たり前のフレーズは忘れられていた感がある。
問題なのは、物価上昇が始まって以降も賃上げ率がインフレ率を下回る状況が続いていることだ。厚生労働省の毎月勤労統計によれば、22年11月の実質賃金指数は前年同月比マイナス3.8%と大幅な減少だった。
これだけインフレ率が高くなると、さすがに労働者の不満は高まる。連合もその圧力を感じて、今年の春闘で5%の賃上げを目指す方針を示した。支持率低下に喘ぐ岸田政権も昨年の臨時国会の総理所信表明演説の「物価上昇に『見合う』賃上げの実現」から、今年の年頭記者会見では、「インフレ率を『超える』賃上げの実現」へとその姿勢を一段と強めている。
しかし、これで実質賃金がプラスになると思ったら大間違いだ。インフレ率が4%の場合、賃上げが連合要求の5%になれば、実質賃金は上がるかというと、実は、そうではない。何故なら、連合が言う賃上げの中には、定期昇給分とベースアップ分の両方が含まれているからだ。定昇は、勤続年数が増えるごとに毎年自動的に上がる昇給だ。個人で見れば給料は上がるが、一方で、定年退職した人は比較的高給だったのが退職後の再雇用では賃金は大幅減となるし、新入社員の給与水準は一番低い。したがって、労働者全体の給与水準は必ずしも上がらないのだ。