対角から円周の魚眼ズーム
FXフォーマット(35ミリ判フルサイズ)のカメラ装着時、ワイド端8ミリで全周180度の円周魚眼、テレ端の15ミリで180度の画角の対角線魚眼レンズとして使えるのが、このレンズの大きな特徴である。
DXフォーマット(APS-C)のカメラに装着したときは、ズームリングの11ミリくらいのところにあるDX専用の焦点距離指標からテレ端側で画角180度の対角線魚眼レンズとして使える。
お気づきの読者も多いだろうが、ライバルのキヤノンの開放F値固定で、高性能・高級のLレンズEF8-15mm F4L フィッシュアイ USMと仕様とコンセプトがよく似ている(重さ540グラム、11群14枚構成、最短撮影距離は0.15メートル、実売価格は12万3840円)。
今回のニコンのほうは、開放F値は変動で、重さは少し軽い485グラム、最短撮影距離は1センチ違いの0.16メートル。キヤノンの魚眼ズームは2011年の発売なので、実売価格では差があるが、標準価格は税別で2500円の違いだ。
公開されているMTF曲線も両者伯仲している。数値上ではニッコールが勝る感じだが、写りの印象としては同等といえる。EDガラス3枚、非球面レンズ2枚でナノクリスタルコートも採用。設計基準はワイド端(円周魚眼)側におかれているようだが、撮影してみると焦点距離設定の違いによる描写性能の差はなく開放からコントラストが高く、シャープで気持ちがいい描写をする。
付属のフードはちょっと変わった仕様で、装着は対角線魚眼レンズとして使う場合に限られる。フルサイズ機でワイド端側の円周魚眼として使うときは、フードを取り外す必要がある。
魚眼レンズといえば、その昔は科学写真など特殊な用途として使用されることが多かったが、最近はデフォルメの効果を作画に生かすレンズとして当たり前の存在となっている。この魚眼ズームは焦点距離の設定やフォーマットサイズの違いによって、円周魚眼か対角線魚眼のどちらかを選べるユニークな存在だ。現行のニッコールレンズでフルサイズ用の魚眼レンズは、AI AF Fis hey e-Nikkor16mmf/2.8Dのみ。これは対角線魚眼。円周魚眼は今回の魚眼ズームだけになる。ニコンユーザーの中には待ちに待ったという人もいるに違いない。
◆赤城耕一
●焦点距離・F値:8~15ミリ・F3.5~4.5●レンズ構成:13群15枚(EDガラス3枚、非球面レンズ2枚)●画角:180°00′~175°00′●最短撮影距離:0.16メートル●最大撮影倍率:0.34倍●フィルター径:レンズ後方にゼラチンフィルター装着可●大きさ・重さ:約φ77.5×83.0ミリ・約485グラム●価格:16万4700円(実売14万8500円)●URL:http://www.nikon-image.com/