ゴールデンウィークは日頃、時間や心の余裕がなくて本に浸る時間がないという人こそ、なじみのなかったジャンルの作品を手に取ってみるのはどうだろう。リブロプラス商品部・昼間匠さんが、「休みに読みたい小説」を教えてくれた。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。
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腰を据えて読書ができる長期休暇前は、やはり長編小説が人気です。そこで、手に取りやすい近刊や新刊から、一気読み必至の長編小説を選びました。
川上未映子さんは女性にとても人気がありますが、『黄色い家』は虐待や貧困、親ガチャといった重いテーマを扱いつつも極上のエンタメ作品なので誰でも手に取りやすいと思います。また『笑って人類!』は、タレントとしての太田光さんのイメージで避けたらもったいない。SFコメディーなので笑いつつも、今の世界の状況にリンクする場面もあり、作家・太田光の心情に触れられます。
『ボタニカ』はNHK連続テレビ小説で注目の牧野富太郎の評伝ですが、研究のためなら手段を選ばず、家族も犠牲にしたという意外な一面も登場します。ドラマとは違った牧野富太郎を知ることができそうです。『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』は高度成長期の東京のカルチャーを松任谷由実さんの成長とともに描いています。『兜町(しま)の男』は経済小説家の清水一行さんの伝記ですが、日本経済の動向も垣間見られます。どちらも、ひとりの人物を通してその時代を思い出したり、知ることができるのも魅力です。
『江戸一新』『広重ぶるう』は時代小説です。前著は、「明暦の大火」からの復興を描いています。東京の原型がここでできあがるわけですが、読後に改めて東京を見渡すとあの時はこうだったんだという思いになるでしょう。後著は、クールな印象の歌川広重ですが「広重ブルー」と呼ばれる美しい青色と出合うまでは、鳴かず飛ばずでした。苦労人で人間臭い広重を知ると版画の印象も変わりそうです。