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 その昔、「明石家さんまのスポーツするぞ! 大放送」(フジテレビ)という番組があった。いまや人妻の色気ムンムンの愛ちゃん(福原愛)がまだまだ幼かった頃、さんまと卓球対決。子ども相手に手加減するどころかムキになる大人気ないさんまが、愛ちゃんを泣かせたことで知られる伝説のスポーツバラエティ番組だ。

 さんまがNHKでスポーツバラエティ特番をやると聞いたとき、真っ先にこの番組が浮かんだ。20年の時を超え、局を超えて、あの番組を復活させるのか、こりゃ楽しみだ、と。ところが蓋を開けてみたらどうだろう。「明石家スポーツ」というなんら工夫のないタイトルが象徴するような凡庸さ。さんまのマシンガントークの残響で耳がキンキンしただけの番組だった。

 にマタタビ、さんまにスポーツ。ただでさえお喋りなさんまに、大好物のスポーツを与えればこうなることは予想がつきそうなものだ。であればこそ暴走するさんまを制御するお目付け役が必要なのに、出演者のなかにそんなことができる人を一人も置かなかったのが致命的。本来、その役割を果たすのがアシスタントなわけだが、今回は局アナではなく、フリーの新井恵理那が担当。NHKにはアナウンサーが佃煮にするほどいるのに、なぜわざわざフリーアナを連れてきたのかが疑問だ。

 女性はほかにダレノガレ明美、真野恵里菜がいたが、誰ひとりとしてスポーツ好きはおらず、収録後にそのまま合コンするために集めてきたのか、と穿ちたくもなる。男性出演者たちも、さんまとスポーツ知識を競い合うような猛者はおらず、「踊る!さんま御殿!!」に初出演した若手芸人同様、なんとかさんまに気に入ってもらおうと、顔色を窺う感じがいただけない。

 「ホンマでっか!?TV」では各専門家たちがその知識を披露し、それをさんまがあれこれいじり倒すから面白いのであって、知識を披露するのもいじるのもさんま、さんまづくしのフルコース。じっくり味わうどころか、見るのも嫌に。さんまが熱くなればなるほど、見ているこちらはどんどん冷める残念スパイラル。

 こういう偏愛的嗜好を語る番組、悪くないと思うけど、さんまを使うなら、そのパワーに負けないほどの熱い男、例えば松岡修造あたりをもってこないと、成立しないのでは。タモリとは違い、さんまとNHKの相性はあまりよろしくないと思われる。win―winならぬ、lose―loseな関係。お互いにもう関わらないほうがいいのでは、ということで、今月のダラクシー賞を贈りたい。

※『GALAC(ぎゃらく) 7月号』より

桧山珠美(ひやま・たまみ)/「今月のダラクシー賞」も今月で100回を迎えました。これもひとえに皆様のおかげです。感謝感謝のめんぱっちん。