■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
孤独に包まれた愛らしさで人間世界を行くEOから目が離せない。動物愛護精神に始まり、「馬はソーセージ、ロバは……」に至る残酷。巨大ダムから噴き出す水の前を悠然と歩く姿を見れば、どんな人間ドラマも小さく思える。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
ロバの放浪には、本人が意識しなくても、かつて祖国を離れて、各国を転々としていた監督の体験が表れている。強烈な色彩や大胆なカメラワークで、現実にシュールなイメージを織り交ぜる独特の感性は、この監督ならでは。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
私の前世はロバだったの?と思ってしまうほどEOと通じ合っていました。煙草の煙を嗅ぐところのお茶目さ、いじめられたときの切なさ。名演技です。全体的にセリフが少ないからこその間の重要さ。呼吸が静かになる。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
同じくロバを主人公にした「バルタザールどこへ行く」にインスパイアされた映画だが、本家よりも飄々とした感じが漂うのと、周到な音響設計の見事さがスコリモフスキらしい。古典落語に対する新作落語のような逸品。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2023年5月5-12日合併号