(※写真はイメージ)
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 安倍政権が「一丁目一番地」の政策課題に位置付ける、働き方改革の実行計画がまとまった。労働基準法70年の歴史の中でも、旧来の日本的雇用システムの全否定とも取れる大改革であることは事実だ。その一方で、企業や労働者に対して生産性という名の高いハードルを課すシビアな改革でもある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

「労働基準法を犯せばしょっぴかれてしまう。特に、長時間労働への対応をしっかり整える」(製造業の人事マネージャー)

 3月末、政府が最優先で進めてきた働き方改革の実行計画がまとまった。九つあるメニューの中でも、企業が対応に苦慮しそうなのが、「同一労働同一賃金の推進」と「時間外労働の上限規制の導入」の二つである。

 同一労働同一賃金については、同じ企業内での、正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇差を解消する。企業は非正規労働者の求めに応じて、類似業務に就く正社員との待遇差の理由の説明義務を負う。基本給やボーナスについては、合理的な説明さえできれば正社員と非正規労働者とのギャップが認められるが、通勤手当などの各種手当や福利厚生については同じにしなくてはならない。

 時間外労働の上限については、原則は「月45時間、年360時間」だが、労使協定を結べば年720時間、繁忙期は月100時間未満となった。

 働き方改革実現会議のプロセスでは、正社員と非正規労働者との不合理な格差の事例がまとめられたり、時間外労働の上限を月100時間「未満」とするか、「以下」とするかで労使が対立したりと、全く実務の域を出ない、表層的な議論に終始した。

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