又吉直樹の長編小説第2作「劇場」は賛否両論のようだが、又吉ブームはまだまだ続く。よしもとと文藝春秋がコラボした文芸誌「文藝芸人」が登場した。ブームにあやかり、あわよくば第2の又吉探しということなのか。
眉に唾しながら読み始めたのだが……おもしろい! 文芸誌・小説誌に載っているベテラン作家の弛緩した作品より読ませるものがある。ぼくはテレビのない生活をしているので、登場する芸人をほとんど知らない。純粋に作品だけ読んで、素直におもしろいと感じた。もちろん100点満点とはいかないが。
最近の若手芸人は自分でネタをつくるし、舞台で客の反応を肌で知っているから、物語をつくる力もあるのだろう。徳井健太の「団地花」や山名文和の「かさぶた」などにグッときた。欠点は構成の甘さと無理にオチをつけるところか。もし優秀な編集者がついたら、第2、第3の又吉も夢ではない。小説ではないが、野沢直子が父の死を描いた手記「笑うお葬式」もよかった。ぜひ小説に、そして映画にもしてほしい。
西野亮廣のエッセイ「『えんとつ町のプペル』の作り方と届け方」は、すべての出版関係者必読だ。27万部突破の絵本を、どのようにつくり、どのように売ったのかを明かしている。クラウドファンディングによる資金調達と予約販売、クラウドソーシングによる制作スタッフ集め、展覧会やネットを駆使したプロモーションなど、どれも出版界から見ると斬新なアイデアばかりだ。ぼくらは、二言目には「本が売れない」というけれども、売る方法を知らないだけなのである。
※週刊朝日 2017年4月21日号