
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
【写真】「薬漬け」の現場を取材、製薬ビジネスと行政の関係にも斬り込む一冊
「お薬、出しておきますね」──そう医師に言われるがまま「薬漬け」になっていないだろうか? 薬剤使用量が世界でも断トツに多い日本。不眠を感じて訪れたクリニックでいきなり睡眠薬と抗うつ薬を処方されそうになった著者・山岡淳一郎さんが、「なぜ、こうなった?」と「薬漬け」の現場を取材、製薬ビジネスと行政の関係にも斬り込む『ルポ 薬漬け 医療とビジネスの罠』。山岡さんに、同書にかける思いを聞いた。
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「薬漬け」と聞いて犯罪や別世界の話?などと思ってはいけない。登場するのはうつ病に処方される向精神薬や睡眠薬、血圧降下剤やADHD治療薬──すべてあなたの身近にある薬なのだ。著者の山岡淳一郎さん(66)は話す。
「2000年ごろから『うつは心の風邪』というコピーとともに心療内科やクリニックが街中に増えましたよね。そんななかで私も13年に『寝付きが悪いな』と感じて受診をしてみたんです。しかしそこで『うつ病診断シート』を書かされて、そのまま医師が『抑うつ状態ですね。お薬出しましょう』と。まるでベルトコンベア方式です。これはおかしい、と取材を始めました」
まず出会ったのが『なぜうつ病の人が増えたのか』を著した精神科医・冨高辰一郎氏だ。そこで山岡さんは「うつは心の風邪」が大手製薬会社による一大販促キャンペーンであり、その結果、向精神薬の多剤処方や大量服用を引き起こし、副作用に苦しみ、自死を選ぶ人がいる状況を知る。