
ふと立ち寄ったインドカレー屋で
そして私は、あえてがんになったことをオープンにすることに決めました。がんを“隠すもの”にしたくなかったのです。
悪いことをしたわけでもないのに、どうして後ろめたさを感じなければいけないのか――そんな気持ちが強くありました。 ありがたいことに、公表したことで多くの方から励ましの声をいただきました。
「私も乳がんになったけれど、あなたの笑顔に勇気づけられました」
「この機会に検診に行こうと思いました」
そんな言葉の数々に、私自身が救われたのです。
とはいえ、気持ちが落ち込むときがまったくなかったわけではありません。
そんな私を見かねたのか、入院先の病院の先生が「一度、外に出て好きなものを食べてきてください」と仮退院の日を設けてくれました。どこに行こうかと迷いながら、近所を歩き回った末、ふと立ち寄ったのが、以前から何度か訪れたことのあるインドカレー屋さん。

10月1日が記念日に
入店すると、マスターが笑顔でこう言ってくれました。「おー、アグネスさん、元気そうですね!」
彼は私が乳がんで入院していたことを知りませんでした。
でも、その一言が本当に嬉しくて。
「ああ、私は周りからは元気に見えるんだ」「気にしているのは自分だけかもしれない」と思った瞬間、心がスーッと軽くなった気がしました。
それ以来、わが家では毎年10月1日を「インドカレーの日」と名づけて、家族でカレーを囲むようになりました。
今でもこの日は生きていることのありがたさを嚙みしめる、大切な日なのです。
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