
今夏、70歳を迎えたアグネス・チャンさん。2007年、ふとした偶然から乳がんに罹患していることがわかりました。診断の衝撃と不安の中で、「あと5年生きたい」と神様に祈った日、そして「自分らしく生きる」と決めて病を公表したこと。すべてが今の自分自身につながっているといいます。アグネスさんの新刊『ひなげしはなぜ枯れない 心も体もしなやかでいるための45のヒント』から一部抜粋してお届けします。
【写真】アグネスさんの現在の生活に欠かせない存在になっているインドカレー
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乳がんが見つかったのは、2007年。まったくの偶然でした。ある日、ふと右胸にかゆみを感じて、無意識に手を当てた瞬間、小さなしこりに気づいたのです。
もしその前年、がん患者と家族を支援するチャリティーイベント「リレー・フォー・ライフ」を取り上げたNHKの番組に出演していなければ、きっと私はそのまま放っておいたと思います。
でも、そのときの経験がきっかけで、がんへの意識が高まっていた私は、「もしかして、これは……」と、すぐに受診する決心ができました。
突然の「乳がん」告知
おなじみの産婦人科を受診したところ、精密検査のできる大学病院を紹介され、細胞診の結果、「乳がんです」と告げられました。
最初はもちろんショックでした。「えっ、なんで私が?」という思いが押し寄せてきました。

「家族にもがんになった人はいないし、今までこんなに元気だったのに……」と。
でも、その直後に真っ先に思い浮かんだのは三男のことでした。長男は大学生、次男は高校生。でも三男はまだ小学生。
「あと5年ください」と神様に祈った
「この子が中学を卒業するまでは絶対に生きなきゃ」と思いました。「あと5年ください」と神様に祈ったのを、今でもよく覚えています。
幸いなことに、ちょうどその時期、予定されていた大きなコンサートが延期となり、スケジュールに1週間ほど余裕ができていました。9月末に乳がんと診断を受けてから、すぐに治療の手続きを進め、10月1日に手術を受けることができたのです。
その日は、偶然にも「ピンクリボンデー」――乳がんの早期発見・早期治療を啓発する日でした。
いくつもの偶然が重なって、私は命を救ってもらったのだと、今では心から感謝しています。