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 ニュースでは報じられない、フツーのひとたちのありえない「出来事」を残す連載「デキゴトロジー」。今回は遊び歩く息子を更生させた、まさかの方法を紹介します。

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 岡山県の浪人生T樹さん(18)は、現在勉強そっちのけで家にも寄り付かず、夜な夜な悪い仲間と遊び歩く日々。

 あるとき仲間内に、「すごいお宝のある家がある」という噂が流れた。聞けば、そのお宝があるのはまさかのT樹さんの家。なんでも庭からありがたい仏像だか神像だかが出てきて、お祈りすればなんでも願いをかなえてくれるという。町の施設に預かってもらうことも考えられているとか。

 思わぬ情報に、これを独り占めしようともくろんだT樹さん、深夜に家の中を見てみれば、像は仏間にむき出しで置かれていた。像に近づいたT樹さん、思わず「アッ」と声を上げてしまう。

 それは、T樹さんが十数年前の母の日に作った「お母さんの像」だった。背中には「お母さん大好き」の文字に加え、自分の名前まで刻んである。お宝どころかとんだ黒歴史の像だった。

 そこに現れたのが当のお母さん。お宝の噂はグレた息子を心配したお母さんの罠で、ご近所にも協力してもらい、「ありがたい像」の噂を流してもらったのだという。

 その後も像は仏間に飾られたままだが、事情を知らない人の間で、「不良息子まで帰ってくるとは、これぞ本物の神様だ!」という噂が広まり、拝ませてほしいという希望者が時折訪れている。

週刊朝日  2023年4月28日号