7月4日、東京都千代田区の日本記者クラブで会見した森下洋子さん。「戦後80年を問う」をテーマに語った(photo 写真映像部・佐藤創紀)
7月4日、東京都千代田区の日本記者クラブで会見した森下洋子さん。「戦後80年を問う」をテーマに語った(photo 写真映像部・佐藤創紀)

バレエを通じて「平和」をデザインしていく

 私の家では、戦争のことを話す場面はほぼありませんでした。いまの私も、平和の大切さを伝えたいという思いはありますが、それは「あえて口に出す」のではなく、私のこの身体で、全身で皆様に伝え、お届けしたいという思いがあります。

 私たち芸術家の使命は、芸術作品、踊りをデザインすることが最終の目的ではありません。究極の目的は、この人間社会、時代、文明に芸術文化でもって「平和」をデザインしていくことだと私は考えています。クラシックバレエという芸術を通して、多くの皆様が幸せになったり、勇気と希望をもって前進したり。そんな笑顔に満ち溢れた姿こそが、平和へのつながりになっていくのだと思うんです。 

森下さんの夫で、松山バレエ団総代表の清水哲太郎さん。7月4日、日本記者クラブでの森下さんの会見に姿をみせた(photo 写真映像部・佐藤創紀)
森下さんの夫で、松山バレエ団総代表の清水哲太郎さん。7月4日、日本記者クラブでの森下さんの会見に姿をみせた(photo 写真映像部・佐藤創紀)

原爆戦争の下で生まれ育ったものの代表として

 いつも平和を祈り、願っています。平和とは、喜びや、お互いがお互いをいたわり合い、愛する気持ちのこと。人間と人間がお互いに助け合い、喜び合い、常に感謝の気持ちを持つことで、戦争はなくなるはず。でもそれができてないから、世界中でいまも戦争が起き、幼い子どもたちが犠牲になっている。絶対にあってはならないことです。

 私は、人類が故意に落とした、原爆戦争の下で生まれ育ったものの代表として、肉体が滅びるとて、魂の源から、「平和」をうたい踊り続けるのが使命だと信じています。これからも、勇気や希望やロマンを皆様にお届けできるよう、日々の努力を積み重ねていきたいと思っています。

(構成/AERA編集部・小長光哲郎)

AERA 2025年8月11日-8月18日合併号

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