
しかし、アニメがもたらす利益は単なる金額には収まらない。僕は、日本のアニメが世界に広がることで「日本のファン」を増やすことにこそ、大きな意義があると考えている。昨年、漫画家・鳥山明氏が亡くなった際、世界中の人々がSNS上で彼の死を惜しみ、感謝の声を寄せていた。彼の作品によって日本を好きになった人は世界中に数え切れないほどいるだろう。
今、日本では海外援助に関して「なぜ何千億円も外国にお金をばらまくのか」と批判する声もある。しかし、私たちは経済的利益を追求するだけでは生きていけない。日本が必要としている食料やエネルギー、資源は海外からの輸入に依存している。「金さえ払えば売ってくれる」と考えるのは危険だ。世界の分断を深めれば、いずれ取引を拒否されるリスクも生まれるだろう。
「鬼滅の刃」のメッセージが世界中で共感され、日本という国そのものが世界から愛される存在になることこそ、真の意味で日本経済を支える基盤になるはずだ。分断のない社会を描くこの作品が、国内外を問わず、一人でも多くの人々の心に届くことを願っている。
※AERA 2025年8月11日-18日合併号
こちらの記事もおすすめ マンション空室問題から考える“安易に「外国人」と括る危険性” 規制すべきは人ではなく“使い方” 田内学