「はやっている映画」を見に行く

 さらに、ひろゆき氏は映画界で新人発掘や自由な挑戦の場が少ない点にも言及している。

「ジャンプ漫画の成功は、新人作家を発掘して育てる仕組みが機能しているからこそ可能であり、アニメ業界には新たな才能を支える文化が根付いています。一方、映画界はその面で後れを取っており、その結果、観客がアニメ映画に流れやすくなるという循環が生まれていると指摘しています」(同)

 実際、国内歴代興行収入トップ10を見ると、2003年の「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」を除けば、すべてアニメ作品が占めているという現実がある。

「動画でひろゆき氏が言っていたように、日本人は年間平均で映画を1本しか見ないという傾向があり、『見たいものを探す』のではなく、『はやっているものを見に行く』という傾向が強い。つまり興行収入を伸ばすためには、まず“はやっている”という空気をつくることが必要になってきます。これがアニメでは比較的容易にできる一方で、実写映画では情報統制や演出が難しいという構造的な違いもあります」(映画ライター)

鬼滅の刃」の成功は、映画業界にとって大きな刺激となっているのは間違いない。これを機に、新しい才能の発掘や多様な挑戦が増えていけば、日本映画の状況も少しずつ変わっていくだろう。現在公開中の「国宝」が興収71億円超えと話題を呼んでいるが、実写映画でももっと多くのヒット作が生まれてほしいものだ。

(泉康一)

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