映画館に張られた「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」の広告
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 7月18日に公開された映画「劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来」が、公開からわずか10日間で興行収入128億円を突破した。これは国内歴代最高興収404.3億円を記録した前作「無限列車編」を上回るペースで、令和の映画史に新たな金字塔を打ち立てたと言っていいだろう。

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 快進撃の背景には、単なる原作人気やアニメの出来栄えだけでは説明できない、巧みなプロモーション戦略がある。サブカルライターの蒼影コウ氏が語る。

「例えば、本予告映像は公開の1カ月前まで出さず、あえてファンに飢餓感を与えていました。そこから過去作が七夜連続で地上波放送されたり、さまざまな情報が立て続けに解禁され、話題の最大化に成功しています。また、無限城編では3種類のポスターが用意されましたが、敵キャラである猗窩座(あかざ)単独のポスターは無限列車編を観た人へ、鬼殺隊の“柱”が勢ぞろいしたポスターはそれぞれの“推し活層”に向けて訴求。主人公・炭治郎のポスターは子ども向けのヒーロービジュアルとなっていて、それぞれのターゲット層にメッセージが的確に伝わるよう工夫されていました」

 そんな中、ネット上で注目を集めているのが、実業家・ひろゆき氏の“鬼滅評”である。自身のYouTubeチャンネルにて、「週刊少年ジャンプ」連載時の「鬼滅の刃」はそこまで話題になっていなかったことを挙げ、アニメ化による映像展開が爆発的な情報拡散の起点となり、それがコンテンツの成功に直結したと分析した。加えて、原作漫画が無理にシリーズを引き伸ばすことなく終了している点を評価し、アニメも完結までの映像化が約束されていることで、観客は安心してチケットを購入できたとも述べていた。

 一方で、鬼滅の大ヒットの裏に見え隠れする日本映画界の“致命的弱点”にも触れている。

「ひろゆき氏が問題視していたのは、原作がある実写版映画で俳優やタレントの人気に過度に依存した制作体制です。企画段階から『人気アイドルが出演すれば一定数の固定客が見込める』という逆算が優先され、脚本や演出よりも商業的な計算が作品の方向性を決めてしまうと指摘しました。たとえば、10万人のファンがいるアイドルを5人集めて映画を作れば50万人が見て、1人が2000円払えば1億円の興収は確定。ファンが友達を連れてくれば倍になり、スポンサーがつけばさらに数字を積み上げられる……という算段です。これに対して、ひろゆき氏は『そのキャストに合わせて脚本を作ろうとする。それでは面白くなりにくいが、興行成績は安定する。すでに1億円の売り上げが見込めるなら、制作費を5000万円に抑えれば黒字になる』と解説していましたが、こうした状況から、『人気俳優×人気原作』といった安全策が常態化し、自由な創作が難しくなっているといいます」(YouTubeライター)

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