
“フェスに政治を持ち込むな”への応答として
もう一つ記しておきたいのは、アーティストがステージから発した言葉。ちょうど参院選が終わったばかりだったせいか、分断と格差、さまざまな差別が問題視されている現状を踏まえてなのか、いつも以上に言葉によるメッセージを耳にした印象がある。
「世の中がどんどん壊れていくのはなんでか分かるか? 新しくなるためだ! キミらも3日間でぶっ壊れて、生まれ変わってください!」(甲本ヒロト)
「社会を問え、政治を問え、福島を問え、広島を問え、ガザを問え、何よりも自分自身を深く問え」(TOSHI-LOW)
さらにSuchmosのYONCE(V)は“Earth First”と書かれたTシャツでステージに立ち、春ねむりは参政党のさや氏への怒りを表した楽曲「IGMF」を「セットリストに入れてないので、今かけます」とリハ中に流し、サンボマスターの山口隆(V&G)は「国籍関係なく美しいって証明する!」と叫んだ。“フェスに政治を持ち込むな”“音楽と政治は分けて”という言説はいまだにあるが、“何を考え、どう生き、どんな表現をするか”が音楽(をはじめとするすべてのアート)なのだから、そこを切り離して考えることはやっぱりできない。来年の開催は7月24日、25日、26日。いろいろな国の音楽を、いろいろな国の人たちと一緒に体感できるのが今から楽しみでしょうがない。
(文/森 朋之)
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