近畿地区は何といっても昆布だしの食文化である。このため、玉子焼きも昆布だしとかつおだしをベースにしただし巻玉子に変更した。また近畿地方は洋食店が多く、デミグラスソースに馴染んでいることを商品開発に取り入れ、デミグラスソースでハンバーグ弁当などを開発した。肉じゃがなども豚肉から牛肉に変更するなど、徹底的に関西風の味つけにした。

 こうした周到な準備が奏効して、近畿地区の店舗数でローソンを上回り、弁当や総菜のデイリー食品の比率を高めることに成功したのだ。

●地道な地域性の調査を続け、商品開発につなげる

 同社は現在、全国を20の地区に分けて管理している。1地区に少なくとも1店以上は実験店を置いて、地域の嗜好に合った商品などをセブン-イレブンの専用工場で開発し、きめ細かくニーズを拾っていく方針なのである。

 かつて市中に多くあった魚屋、肉屋などは平均して500人くらいの顧客の顔や、よく買っていく商品を覚えていたといわれる。「あそこのうちは、よくブリの切り身を買っていくとか、毎日のように刺身の盛り合わせを買っていく」などと考えて仕入れをしていた魚屋さんも少なくなったとみられる。

 だが、こうした生業的な地域の小売店が減り、コンビニが今その一部機能を代行している。

 AI(人工知能)が発達すれば顧客の嗜好を割り出して、「こういう品揃えをせよ」と回答を出しくるかもしれないが、それはまだ先。それまで小売業は、地道な地域性の調査という作業を続けなければならない。

 セブン-イレブンが実験店を増やすのも、そうした地道な作業を続けるためといっていい。店舗がある地域のニーズを顕在化する。そして商品開発につなげる。

 大手スーパーも、より地域の嗜好、ニーズを把握し商品政策を地域単位に変えようと、従来から連綿と続けてきた本部主導から、店舗や地区の担当事務所主導に転換している。

 スーパーは一律に大量に買い付けて価格を安くすることを大命題としてきただけに、転換に苦労しているようだが、どのチェーンも地域性の反映は急務となっている。(文/流通ジャーナリスト 森山真二)

[AERA最新号はこちら]