学校や仕事、生活での悩みや疑問。廣津留さんならどう考える?(撮影/吉松伸太郎)
学校や仕事、生活での悩みや疑問。廣津留さんならどう考える?(撮影/吉松伸太郎)
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小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA DIGITAL連載。今回は、日本語をもっと広めたいと考える70代女性からの質問に答えてもらった。

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Q. 日本語を普及させるためにはどんなことをしたらいいと思いますか? 日本の文化が広がることや世界で活躍している方々が日本語を他国で使うのも効果的だと思いますが、ほかに妙案があれば教えてください。

A. うーん。なかなか難しい質問ですね。知らない言語を突然学ぼうとはあまりならないと思うので、やっぱり日本に興味を持ってもらうことが近道なのかなと思います。アメリカにいたころに私のまわりで日本語を勉強していた人は、何かしら日本の文化に触れたことがきっかけだったという人がほとんどでした。たとえば、ハーバード大の剣道部に所属していた友人は、剣道が好きで「面」や「胴」などの剣道用語が日本語の音のまま使われているから、日本語を勉強してみようと思ったと話していました。アニメも影響力が強いですよね。「ハイキュー!!」や「NARUTO -ナルト-」「呪術廻戦」「ワンパンマン」あたりが人気でした。アニメによく出てくる日本語は自然に覚えちゃうので、そこから日本語に興味を持つ人も多かったですね。

 母語よりも複雑な言語を学ぶのは大変だと、言語学を学んでいた友人も言っていました。日本語は世界の言語の中でも複雑なほうだといわれているので、海外の人が勉強するのは大変だろうなと思います。特に数の数え方をマスターするのは苦労するみたいです。日本語では「1本、2本、3本……」と同じ単位でも数が変わると「ぽん、ほん、ぼん」と発音が変わることもありますからね。日本語が母語だと特に意識していないので、なぜそうなるのかを聞かれても説明できない(笑)。そういう習得の難しさは別にして、日本語は言葉の響きとして「ソフトで丁寧な感じの言語だよね」とはよく言われますね。

 妙案とはいえないかもしれませんが、「日本語って面白い」と思ってもらえるような言語コンテンツを動画にするのはひとつの手かなと思います。ひらがなやカタカナの形はどうやってできたのか、漢字を含めて3種類の文字をどう使い分けているのかなど。日本を旅行先に考えている外国人は動画もチェックしていることが多いですし、トリビアみたいな内容があると拡散もされやすそうです。

 言語トリビアといえば、トルコ語と日本語が実は文法的に似ているという話を語学が得意な大学時代の同級生から聞き、面白いなと思ったことがあります。語順もほぼ同じで、「良い」が「iyi(イイ)」、「お茶」は「çay(チャイ)」など単語も似ているものがあるそうです。トルコと日本って地理的には遠いのに不思議ですよね。そういった、他の国の人が自国の言葉と結びつけられるようなエピソードがあると、日本語に興味を持ってくれるかもしれません。

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