どんな人が参政党を支持しているのか
――参政党の支持者とは、どのような人たちなのでしょうか。
【烏谷】評論家の古谷経衡さんが「参政党支持層の研究」(※1)という話題になった記事において、参政党支持者の多くは、人生で初めて投票するような政治的無関心層であると指摘していました。そのため、既存の政治的イデオロギーでいう右や左という分類に単純に当てはまらない面があるようです。
(※1 Yahooニュース「参政党支持層の研究」2025年6月26日)
他方で、評論家の荻上チキさんが主催するチキラボの「2025年東京都議選をめぐる有権者の意識調査」における「参政党に投票したのはどんな人か?」(※2)では、興味深い結果が出ていました。
(※2 社会調査支援機構チキラボ「参政党に投票したのは、どんな人なのか 〜参政党への投票行動を分析する②」2025年7月9日)
以前は、元航空幕僚長の田母神俊雄氏や日本第一党の櫻井誠氏ら、自民党以外の保守政治家に投票していた層が、参政党を支持しているという結果が出たのです。参政党が、自民党に不満を持つ人たちの受け皿になっている面もはっきりと見えてきたということです。
「民意」の中に陰謀論が含まれているという事実は、これまで民主主義について考える際にあまり議論されてこなかったことのように思います。
トランプ大統領についていえば、彼は極めて「ポピュリズムの純度」が高い政治家だといえます。ポピュリズムの純度が高いというのは、民衆の中にある被害妄想や誇大妄想まで含めて全て受け入れるということを意味しています。それが彼の強みであり、危険な面でもあります。
どんな人でも陰謀論に影響を受けている
【烏谷】トランプ氏は演説集会や後援会で人々に率直な言葉で語りかけ、人々の生の反応のなかにある本音、本心をつかみ出すところから自身の方針を決めていくタイプの政治家です。
「国境に壁をつくる」や、主要メディアに対する「彼らはフェイクニュースメディアだ」などの攻撃的な言葉も、聴衆の熱狂的な反応から定番化していきました。もともとは政治思想的に無色透明だったといわれる彼が、急進右派ポピュリズムの立場に落ち着いたのは、このようにして民意を吸い上げ続けた結果であったと考えられるのです。
「民意」に忠実であり、トランプ大統領同様に既存メディアを敵視する参政党は、新たな日本型ポピュリズムとして危険な存在になる可能性があり、注視していく必要があります。
もはや陰謀論は無視しておけば、そのうち消えてなくなるノイズではありません。ネットやSNSが発達した時代、どんな人でも多かれ少なかれ陰謀論に触れて、影響を受けています。
民意としての陰謀論とどのように向き合っていくべきなのか。真剣に考える段階にきている――。私は先月刊行した『となりの陰謀論』でそう指摘しました。執筆時は民意としての陰謀論が力を持つには、もう少し時間がかかると想像していましたが、参政党の躍進で懸念していたことがいままさに現実となりつつあります。
陰謀論は荒唐無稽であるがゆえ、政治学や社会学の分野では真剣に研究する価値がないと無視されてきました。メディアも同じはずです。しかし陰謀論は、現実の社会を浸食しはじめています。だからこそ、真剣に陰謀論との向き合い方を考えていく必要があるのです。
(烏谷 昌幸:慶應義塾大学法学部政治学科教授)
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