急進右派ポピュリズムの日本版

 【烏谷】もうひとつ参政党が有権者に訴えているのが、既存の政党やメディアへの不信です。政党やメディアが、自分たちに何かメリットをもたらしてくれるのか。むしろ自分たちをないがしろにして、既得権益をむさぼっているだけの存在ではないか。そうした不信感を煽っている。

 参政党は、世界的に台頭著しい急進右派ポピュリズムの日本版です。アメリカのMAGA(Make America Great Again)のムーブメント、ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)、フランスの国民連合などが急進右派ポピュリズムの代表例として有名です。先進国の中では、日本のみ例外的に急進右派ポピュリズムの勢力が弱いと思われてきました。しかし、参政党の台頭である意味で先進国並みになったとも言えます。

 ポピュリズムとは世の中をエリートと民衆に区別して、民衆の側に立って戦う政治スタイルです。民衆こそが正義で「民の声」にこそ忠実に行動しなければならないと考えるのが、ポピュリストの原則です。

 ポピュリストの原則は、表面的に捉えられることが多いのですが、これを甘くみてはいけません。参政党にしても、「民意」と向き合うことを徹底している面があるからこそ、支持者が増え、まさにこの参院選の台風の目となっているのです。

大事なのは「日本人ファースト」の“背後”

 【烏谷】参政党の躍進の原因について、SNSでの宣伝の巧みさやロシアのような外国からの介入の影響を強調する意見もありますが、それらはあくまでも付随的なことです。

 成功するポピュリズムの運動は必ずといっていいほど、社会の中の「集合的無意識」と強く共鳴する内容を持っています。

 参政党の議員や支持者たちが語るさまざまな陰謀論の間違いをひとつひとつ指摘していくことは必要なことですが、「日本人ファースト」というスローガンの背後にあるものを軽視してはいけないと思います。

――ポピュリズムを生み出す「民意」とは、危険なもののようにも感じます。

 確かに、民意と言えば聞こえはいいですが、民衆の叫びのなかには陰謀論や事実に基づかない訴えが含まれる場合も少なくありません。

 現在も各議員の元には多くの陳情が寄せられていることでしょう。これまでも議員たちは、民衆の不満に耳を傾けつつ、陰謀論混じりの言説を取り除きながら現実や事実に即した点を拾い上げ、陳情として受け止めてきたものと思います。

 参政党の懸念点は、そうした不満の声を丸ごと吸い上げてしまってはいないかということです。彼らの「民意」をそのまま受け取ることで、陰謀論抜きにはいかなる問題意識も語れないような集団になっていないかと心配になります。

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