
「方丈」には、狩野山楽・山雪による全152面の襖絵や杉戸絵などの障壁画が残る。金箔を施した「竹に虎図」「梅・柳に遊禽図」のようなきらびやかな金碧画、「山水人物図」といった水墨画、彩色画が施された27面にも及ぶ杉戸など、創建当時の絢爛豪華さを今に伝えている。障壁画の一部は高精細デジタル複製作品だが、その再現度の高さにも注目したい。

華やかな襖絵を堪能するのはもちろんだが、庭園も見事。プレスツアーが実施された6月は新緑が美しかった。盛夏の緑はきっと、涼を感じさせてくれることだろう。
嵐山の喧騒から離れ苔庭の潤いに浸る「常寂光寺」

「穴場」スポット2カ所目は、天球院から西に3キロほどのところにある嵯峨野・嵐山エリア、小倉山の中腹にある日蓮宗の寺院「常寂光寺」だ。藤原定家の山荘「時雨亭」跡に建てられたといわれ、1596(慶長元)年に日禛(にっしん)がこの地に隠棲したことに始まる。苔庭が美しいスポットとしても知られ、自然豊かな境内には市街地ではあまり見られない珍しい苔も豊富に生息している。

常寂光寺の敷地はおよそ2万坪と広大で、約30種類もの苔を見ることができるという。日頃から庭の手入れをしている住職・長尾憲佑さんによると、苔は放っておいて生えるものではない。「日々の丁寧な手入れによって育ち、たとえ立派に広がっても、落ち葉が積もれば光合成ができずにたった1年で枯れてしまいます」。さらに、常寂光寺は回遊式庭園のため、どこから見ても美しい苔の景色を保たなければならない。そんな繊細な庭を守り続けているのが、住職たちの毎日の努力。その積み重ねがあるからこそ、青もみじなどの緑と苔が深く調和した瑞々しい風景を味わうことができるのだ。
京の粋を感じる鴨川沿いの美食舞台

「穴場」スポット3カ所目は、「LE UN鮒鶴京都鴨川リゾート」。1870(明治3)年創業で、登録有形文化財の料亭旅館「鮒鶴」の歴史的建築を利用した空間が自慢のレストランだ。鴨川を目前に京野菜など旬の食材を使ったフレンチを楽しめる。夏場に開かれる川床席も人気で、特別な時間を過ごせるだろう。