
おすすめは、メインを選ぶことができる「京フレンチ膳」。プレスツアーでは、西京味噌を使用した白ワインソースを絡めた「金目鯛のプレゼ」や、噛むほどに旨味が広がる「国産牛フィレ肉のポワレ」などをいただいた。プレスツアー用のため通常の提供メニューとは異なるということだが、どちらも素材を生かした、京都らしく洗練されたフレンチだった。
「杉本家住宅」で出合う、京都の“初夏のしつらえ”

四条通りから一本南の綾小路通りに佇む「杉本家住宅」もまた、「穴場」と言えるスポットだ。国の重要文化財にも指定されていて、四条烏丸という京都の中心部にありながら、京の歴史と静けさを感じられる貴重な場所だ。
江戸時代に呉服商として創業した大規模な商家で、一度は火災により焼失したが、1870(明治3)年に再建され、155年もの時を重ねてきた。通りに面した部分に店(商いの場)があり、その奥に「住まい」や「作業場」が連なる「表屋造り」と呼ばれる京町家の典型を今に伝え、当時の京大工の技量が遺憾なく発揮されている。 京都には、季節の移ろいに応じて住空間や装飾を丁寧に整える「しつらえ」の文化がある。杉本家住宅ではそんな文化が大切に受け継がれていて、夏には風通しの良い葦戸や葦簀へと建具を取り換え、陽射しを和らげるための簾がふわりと揺れるたび、目に涼しい景色が生まれる。

杉本家十代目当主の杉本節子さんは、「季節のしつらえを整えることは、重要な年中行事です。その時々にしか出会えない町家の風景を通して、日本人が古くから育んだ暮らしや文化を体感し、豊かな時間を過ごしてほしいです」と話す。「杉本家住宅」は、建物だけではなく庭園部分も名勝に指定されている。暮らしの記憶が息づく町家なら、京都ならではの夏を堪能できる。

(文と写真 生活・文化編集部 安田彩華/取材協力 JR東海)
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