写真はイメージです(写真:Getty Images)
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 保育園を運営する事業者の倒産が今年上半期で22件に達し、年間で過去最多を更新するペースだ。「待機児童ゼロ」を目標に全国で保育施設が整備されたことを背景に、少子化による児童の獲得競争、保育士の不足、物価高の「三重苦」が経営を圧迫している。

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 帝国データバンクが7月に発表した「『保育園』の倒産・休廃業解散動向(2025年上半期)」によると、25年1月〜6月の保育園事業者の倒産(負債1千万円以上、法的整理)、休廃業、解散による閉鎖は、中小事業者を中心に計22件。前年同期の13件から大幅に増えた。1年を通して、最多だった24年(31件)を上回る勢いだ。「(倒産や休廃業は)東京都など首都圏で目立つが、全国的に発生している」という。

 背景には、保育業界の大きな環境変化がある。こども家庭庁による取りまとめでは、14年からの10年間で保育施設数は約1万5千カ所増え、24年には3万9805カ所に。定員は約71万人増の約304万人まで拡充された。待機児童ゼロを9割近い自治体が達成する中で少子化はますます進み、施設間の児童獲得競争は激しさを増している。

 さらに、保育士の担い手不足による採用難や、給食を提供する施設での食材費や光熱費などの物価高の影響も深刻だ。帝国データバンクによると、保育園を運営する事業者の2023年度の収益動向は、前年度から減益・赤字となっている「業績悪化」の割合が54.3%で半数を超えている。

 帝国データバンクは「保育士の慢性的な人材不足によって適切な人員配置が困難となり、定員数を制限せざるを得ない事業者や、離職を防ぐために給与水準の引き上げを実施し、利益が圧迫される事業者が目立つ」とし、特に保育施設運営への参入から日が浅い事業者や経営体力のない事業者が、収益力低下のリスクを抱えていると指摘する。

 一方で、英語や音楽、スポーツなどの専門プログラム導入でサービスの付加価値を高める動きや、発達障害児の支援施設など関連分野への進出によって経営の多角化を図る動きも広がっていると分析。今後も、立地面やサービス内容で差別化が図れない運営事業者は厳しい状況に置かれるとみられる。

(ライター 船崎桜)

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