「『いっ休』はどう?」と家内。「なんだよ、それ? 坊主だから『一休』なんてそのまんまじゃないか。耳なし芳一と一休さんだったら、芳一のほうが『闇』があっていいじゃないか!」と反論すると、家内いわく「落語家の名前に『闇』は要らない」だそう。全会一致で『いっ休』に決まりました。一之輔一門は案外と民主的。でもなんで自分の弟子なのに自由に名前をつけられないの?
あれから5年経て、今年11月、いっ休が二つ目に昇進することになりました。「二つ目になったら『芳いち』だな!」と私が切り出す前に「『いっ休』のままでいきたいです」とのこと。なんだよ、それ。つまんねーな。ともあれカミさんに感謝し、11月までしくじることなく無事でいろ。いっ休。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2023年4月28日号