4.スポーツ局と事業局の放映権購入やコンサート・イベント主催、共催時の出資に際する事業計画稟議の精査、費用対効果の放送、興行終了後のデータ分析、営業収支責任の所在明確化が必要。全ての参画企業と契約書を交わさずイベントを実施し、事後精算時に請求書、領収書を作成するなど、ともすれば特に在京局の中でも緩いとエンタメ業界内、特にイベンター関係者に揶揄される体質の迅速な改善が望ましい。
5.系列局との関係改善を迅速に行うべきで、例えば関西テレビに於いては、プライムタイムの番組枠2枠を返上させられた、東海テレビは、土曜深夜枠のドラマの再放送権を強引にFOD優先にと指示されたなど、被害者意識が強くなるとともに、フジテレビが起こした問題により、連座され、営業面でも苦戦を強いられているとの意識の広がりが深刻なレベルに達している。制作と全国営業能力を保有する地方局、特に準キイ局との連携を再構築し、長期の視座によりネットワーク全体の蘇生に彼らの協力を得るべきである。
6.フジ・サンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル(FCI)による国際事業も、採算性より海外在住日本人への国内報道情報とエンタテイメントの供与を重視し、継続してきたことは否定できないが、世界的なブロードバンドの普及により、日本国内からの情報は海外でも不自由なくYouTubeやSVODによって視聴できる時代になり、すでに5年は経過している。役割を終えた海外法人は縮小か整理すべきであり、海外番組販売も今ではZoomやTeamsで大半の交渉が行われ、海外の番組交易市場も縮小化している現実を踏まえ、効率化を図るべきである。
7.FODは、OTTの市場シェアー争奪戦には、大きく出遅れ、U-NextやAmazon、Abemaが既に多くの有償視聴者を獲得した現時点で、新たに単独で優位性を得ることは多難である。編成で勝負を挑むにしても、HBOMAXやディズニーのコンテンツ入手は困難で、スポーツ放映権もU-NextとDAZNの競合も激化し高騰が続いている。FOD単独での市場拡大は多難であるため、docomo、KDDIなどのモバイル通信事業者か、U-Nextのように優位性を既に確立したOTTとの連携による事業戦略を早急に模索、構築すべきである。
ダルトンのスタンス次第では、再度力を貸す可能性も
この提案書を提出した後、FMHからはビデオ形式で社外、社内の役職員3名から30分弱の質問を受けたが、その内容は概ね私が提案した具体案についてではなく、兼務が多いようだが本当にFMHの取締役としての職制が全うできるのかとのもので、形式的なものに過ぎず、私や、ほぼ同様にIPとして価値のある番組に注力することを示唆した福田氏の提言が日の目を見ることは無かった。
ダルトンの挑戦は継続する可能性が強く、村上ファンド・グループなどとの共闘もあり得るかも知れない。短期に利ザヤを稼ぐ目的ではなく、株式の長期保有を前提として経営改善に寄与するスタンスが確認できれば、ローゼンワルド氏に再度、力を貸すこともあり得ると考えている。
北谷賢司/KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授、同コンテンツ&テクノロジー融合研究所所長
ワシントン州立大学コミュニケーション学部放送報道学科を卒業後、ウイスコンシン大学大学院にて通信法、メディア・エンタメ産業経営を専攻し、1981年にこの領域で日本人初の博士号を取得。日本テレビ、TBSで国際事業顧問を務め、TBSメディア総研取締役、TBS米国法人上席副社長、東京ドーム取締役兼米国法人社長、ソニー本社執行役員兼米国本社エグゼクティブ・バイス・プレジデントを経て、2004年に帰国。ソニー特別顧問、ぴあ社外取締役、ローソン顧問、エイベックス国際ホールディングス社長などを歴任。 ワーナーミュージック会長、DAZN会長も兼務した。
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