写真・図版(1枚目)| ダルトンの株主提案は何故、フジ・メディア・ホールディングスに排除されたのか?
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2025年6月、フジ・メディア・ホールディングスの株主総会が行われ、投資ファンドの米ダルトン・インベストメンツ(以下、ダルトン)が提案した12人の取締役候補者は、いずれも受け入れられることはありませんでした。フジテレビの諸問題による業績悪化を踏まえると、株主はフジテレビの抜本的な改革を期待していたと思われますが、なぜこのような結果になったのでしょうか。ダルトン社が株主提案した取締役候補のひとり、北谷賢司さんの寄稿をお届けします。

【写真】フジテレビ本社

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フジテレビに取締役候補を提出することになった背景

3月上旬、私は投資ファンド、ダルトンの東京リサーチオフィスの責任者である林史郎氏から、ダルトンの共同創業者で最高投資責任者のジェイミー・ローゼンワルド氏がフジ・メディア・ホールディングス (以下、FMH)に対して新たな取締役候補者を推挙する株主提案を行うので、是非、私に候補になり、更に適役の候補者を複数、出来るだけ早く、集めて欲しいとの依頼を受けた。

ローゼンワルド氏からは、10年以上前に、彼が投資した、旧知の生体認証技術企業の社長からの紹介で、今後、日本のメディア、エンタメ企業に対して短期ではなく、長期で株の購入を進め、企業価値の向上を提言したいので、相談に乗って欲しいとの要請を受け、以来、あくまでボランティアとして彼にアドバイスを供与してきた仲である。彼も、私と同様に、ニューヨーク大学、ワシントン州立大学と大学は異なるものの、無償で教鞭をとり、大学に奨学基金を設立して寄付を行うという共通点があったことから、相互に信頼感を抱くようになり、東京とロサンゼルスで年に数回、彼が株を買い進めたメディア・エンタメ企業についての質問に応談する関係が続いていた。

私は70年代に、放送ジャーナリズムに興味を持ってワシントン州大に留学、卒業後、ウイスコンシン大学院でテレコミュニケーション法、メディア経営を先行し、修士号、博士号を取得、インディアナ大学などでの教職を経て、日米で放送メディア、エンタテイメント産業の経営に携わって来たことから、ローゼンワルド氏にとって、直接、英語で日本のメディア産業について聞きたいことを訊ねられる利便性の高い存在であったと思える。

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