「バズ政党」は飽きられやすい
ここまで「参政党がバズった背景」を考察してきたが、これは裏を返すと、ひとたび“時代の波”から外れてしまえば、その影響力を一気に失う可能性を秘めている。ネットユーザーは、熱しやすく冷めやすい。ストーリーの消費サイクルが激しく、数日単位でブームが入れ替わる。失望させないように、常に支持者に刺激を与え続ける必要がある。
すぐに“旬”が変わる例として、典型的なのが国民民主党だ。2024年10月の衆院選で、議席を4倍に増やす躍進を見せたが、翌月に報じられた玉木雄一郎代表の女性スキャンダルで潮目が変化。2025年5月には、参院選比例候補(予定)者による過去の言動が問題視され、公認基準の一貫性が問われた。
参政党に目を向けると、この“熱狂”を維持できるかが、今後のカギを握るだろう。それは参院選の17日間も例外ではない。参政党は公約として、「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」(公式サイトより)を盛り込んでいる。これについて、神谷氏が7月8日に「蓄えもしないと大変だと啓発する思いで入れた」などと発言したところ、「終末期医療が必要なのは高齢者だけではない」といった批判が相次いでいる。
「ボートマッチ」の過信は禁物
発言に対する反発といえば、自民・鶴保庸介参院議員(今回は非改選)の「運のいいことに能登で地震があった」発言も話題だ。鶴保氏は謝罪するも、離党や議員辞職は否定。あくまで1議員の失言ではあるが、党執行部がキッパリとした態度を取らないとなれば、自民党全体のイメージダウンは避けられない。こうした票もまた、「モノ言う参政党」へと流れていくのだろう。
今回の参院選では、物価高などの要因から、「社会保険料をめぐる現役世代の負担増」も主要な争点だ。もし医療費負担を削減できれば、当然ながら“票”につながりやすい。しかし、どう削減するかの手法までは、ボートマッチで可視化されない。
参政党の成功により、今後は“短絡ルート”を攻略しようとする政党や政治団体も増えていきそうだ。そうなった時に重要なのは、有権者みずからの判断能力だ。ボートマッチ頼みにするのではなく、有権者一人ひとりが真剣に各政党の主張を比較検討しない限り、民主主義の成熟には、まだまだほど遠い状況と言えるだろう。
(城戸 譲:ネットメディア研究家)
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