評論家の古谷経衡氏(本人提供)
評論家の古谷経衡氏(本人提供)
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 参政党の支持率が急伸するなか、間もなく参議院議員選挙の投開票を迎える。参政党を支持しているのはどんな人々なのか。長く保守論壇で活動してきた評論家で、6月に発表した論考「参政党支持層の研究」が話題を呼んだ古谷経衡氏に聞いた。

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 6月下旬に発表した論考で、私は参政党支持層について、多くが「日本政治や社会の大まかな構造に対して、驚くほど無知で無関心」な人々、これまで一度も投票に行ったことがなかった「無関心層」であると書きました。

 一方、参院選が公示されて以降も支持率が伸長していることから、「岩盤保守層やネット右翼が大量に参政党へ流れているのではないか」との問いをしばしば受けます。しかし、そうではないでしょう。日本のネット右翼人口はおおよそ200万人程度とされています。最近はそのうち6割程度が日本保守党支持でまとまり、残り4割が自民党の旧清和会(安倍派)系や国民民主党を支持してきました。日本保守党内部の内紛や自民党の体たらくで一部は参政党に流れているでしょうが、私は多くてもネット右翼人口の2割強、票数で言うと40万~50万票程度だろうと見ています。参政党が比例で取るとみられる票の全体から考えるとごく一部です。

 また、保守論壇はそもそも参政党と競合しません。参政党の主張は、従来の保守層やネット右翼とは相いれないからです。ネット右翼は揶揄されることも多いですが、一応は作法というか、理論があるんです。「憲法9条改正」、「自虐史観からの脱却」などの主張は彼らなりに学んだ理論の上にあります。例えば参政党の憲法草案が話題ですが、あれは「保守的」でも「ネット右翼的」でも全くありません。国家像の思想が見えませんし、憲法第1条を完全に書き換えるような意見はネット右翼からですらほとんど聞いたことがない。また、神谷宗幣代表はかつて「天皇陛下に側室を」と語っていましたが、保守・右翼界隈でこんなことを言おうものなら袋だたきです。

 つまり、いま参政党を支持している人の多くも、これまで私が接触してきた支持層と大きく変わっていないでしょう。繰り返しになりますが、人生で初めて投票に行く「無関心層」です。保守とリベラルの対立構造や与野党の違いすらあいまいで、報道や外国人が増えたという何となくの実感から無自覚なゼノフォビア(外国人嫌悪)を抱いた人々。それが参政党支持層の中心だと考えています。

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