そもそも、昨秋の衆院選後の斉藤氏の代表就任は「本人も想定していなかった事態」(側近)だった。
8期15年も代表を務めた山口那津男参院議員が昨年9月の代表戦に立候補しなかったことを受けて、後継代表には石井啓一・元国土交通相が就任した。しかし、その後の衆院選で石井氏は落選して代表辞任を余儀なくされ、72歳の山口氏より年上で、「任期中に69歳を超える」という同党の内規による「議員定年」を大きく超える73歳の斉藤氏が“当座のつなぎ役”として代表となったのだ。
もちろん、斉藤氏は党幹事長などを歴任した、山口氏と並ぶ党内の最有力議員であり、党内でも「斉藤さんしかいない」との声が圧倒的だった。ただ、斉藤氏は就任時から周辺に「私の代表としての任務は参院選まで。参院選の結果にかかわらず、今年9月の党大会での退職と後継者選びを進める」という考えを漏らしていたとされる。
このため、今回の参院選では斉藤氏の心境を知る山口氏が、「自分が先頭に立って公明党候補を応援する」との決意から、斉藤氏を上回る過密日程で全国を駆け巡っている。山口氏はもともと、「公明党・創価学会の最強の中核部隊とされる『婦人部』の人気者」だけに、遊説先でも代表の斉藤氏を上回る動員力とアピール力を発揮している。
軽減税率などで自民党との歩調の乱れも
斉藤氏は公示日の7月3日に神戸市内で第一声を上げ、「参院選は『物価高乗り越え選挙』だ。生活の安心に関わる社会保障をしっかり大事にする責任ある減税を行っていく」と訴えた。
その中で、減税の具体策として、①所得税減税や扶養控除の見直し、②ガソリンの暫定税率廃止を挙げた。ただ、「自民党の公約との微妙な違い」(党政策担当)も指摘されている。
また斉藤氏は、今回の参院選で立憲民主党などの野党が「消費税減税」を主張していることに対し、「わが党は13年前から食料品の税率は5%が適当だと言ってきた。今後も社会保障と税の一体改革の精神に基づき、軽減税率のあるべき姿を追求していく」と訴えた。だが、この部分も自民党の公約との違いが見受けられる。
そもそも公明党は、昨秋の衆院選で大幅に議席を減らしたことを踏まえて、6月の東京都議選と今回の参院選を「党勢回復に向けた『政治決戦』」と位置づけ、組織の引き締めに全力を挙げてきた。しかし、都議選では36年ぶりに落選者を出すなど、議席減を止められず、参院選でも大苦戦が避けられそうもない。