
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年7月21日号には食品サンプル製作体験カフェ 代表取締役社長 齊藤雅大さんが登場した。
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食品サンプルを作り、それとそっくりの料理を注文できる。完成したら並べて食べてもよし。写真を撮ってSNSに投稿してもよし。遊び心いっぱいのコンセプトが人気を集め、店は多くの外国人観光客や家族連れでにぎわう。
メニューはオムライス、ミートソーススパゲティ、クレープ、ジェリーパフェの4種類。作ってみたい1種類を選んだら、樹脂製の具材をはさみで切ったり、割り箸で混ぜたり、具材同士をくっつけたり──。
ある程度までできあがった材料が提供されるため、複雑な作業は不要。子どもが飽きないように、程よい手数を心がけた。
オムライスやクレープには、ケチャップやチョコレートを模した塗料でデコレーションを楽しむこともできる。本物にも同じ装飾をして並べると、どちらが食べられるのか見分けがつかないほど。最後に熱処理をして固めたら完成だ。
「工程にはみんなに面白いと思ってもらえそうなポイントをいくつか盛り込んでいます。オリジナリティーを出せるデコレーションは特に人気です」
日本で生まれ、独自の進化をとげてきた食品サンプル。着目し始めたのは10年ほど前のことだ。精巧な作りに魅了され、世界に誇れる文化として広めていきたいと感じた。
だが、特に知見があったわけではない。食品サンプルの製造、販売を手がける会社に片っ端から問い合わせ、作り方を教えてもらうところからスタートした。
2024年9月、外国人観光客であふれかえる東京・浅草に店をオープン。国内外から相次ぐ高評価の口コミやSNSを通じた情報発信も功を奏し、あっという間に話題になった。空前の訪日ブームも後押しし、ツアーの団体客も多い。来客数はすでに4千人を超えた。
ユーモアのある世界に飛び込むのが大好きで、日本の伝統とエンターテインメントを掛け合わせた「忍者体験カフェ」の経営者も務める。
「面白さは視点や角度を変えることでも生まれます。これからもずっと自分もお客さんも楽しめることを追求していきたい」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年7月21日号
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